部下が伸び悩んでいる……上司はどうすればいいのか部下育成の教科書(4)(2/4 ページ)

» 2012年04月26日 08時00分 公開
[Business Media 誠]

今までの延長ではなく、大きな転換が求められる

 トランジションの時期は、部下育成の絶好の機会でもあります。

 通常、人は段階が変わってもすぐに仕事の仕方を変えようとはしません。自分の慣れたやり方、得意な方法で仕事を進めようとするものです。段階が変わることが大きな転換を求められるものだとは考えず、今までの延長と見てしまうからです。

 それゆえ、段階が変わっても「もっと頑張ろう」とはしても、「根本的に何か変えよう」とまでは考えません。先に述べたとおり、周囲の期待を薄々感じていても行動には移さない「確信犯」は分かりやすい例です。

 一方、やる気がある人たちにも、落とし穴があります。それは、難易度の高い仕事や新たに求められる役割、より多くの仕事を担うことになっても、これまでのやり方で「もっと速く」「急いで」「よりたくさん」こなそうと、残業を重ねながら努力することです。

 結果、自分でたくさん抱え込んで首が回らなくなり、そこで初めて「このままではうまくいかない」ということに気づきます。しかしそれに気づいても、これまで経験したことのないことに取り組んでいるわけですから、本人は自分の何がいけないのか、どうしたらよいのか、分からずに悶々としてしまいます。

 こんなとき、上司としてその状況をつかみ、効果的なアドバイスをできるかどうかで、部下のトランジションが進むかどうかが大きく左右されます。もちろん、部下にやり方の「答え」をただ教えればいいということではありません。それは本人が苦労して獲得するものだからです。トランジションの状況に気づいて、タイミングよくサポートしてあげられるかどうかが肝心なのです。

 もし、その状況に気づかずに放ったらかしにしていたら、部下はどうなるでしょうか。長い時間をかけて相当な苦労の末にようやくコツをつかみ、次の段階の役割を果たせるようになるか、それとも、いつまで経っても期待にそぐわない状態に陥るか、はたまたつぶれてしまうか……。

 ご自身の経験を思い出してみてください。段階が変わって仕事がうまくいかずに苦労しているとき、上司や先輩のひと言でものの見方がガラッと変わった、何がいけなかったのかにハッと気づいて目から鱗が落ちた、そんな経験があったはずです。

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