駅ナカビジネスは好調だが、問題もあるどうなる? 鉄道の未来(4)(1/6 ページ)

» 2012年05月23日 08時02分 公開
[土肥義則,Business Media 誠]

どうなる? 鉄道の未来

 鉄道の未来は? と聞かれれば、答えは「厳しい」と言わざるを得ない。人口減で需要が減少するなか、台頭する格安航空会社(LCC)と整備されていく高速道路網と戦っていかなければいけないからだ。

 もちろん鉄道が急速に衰退するとは思えない。むしろ首都圏では次々に新線が開業し、既存路線が整備されていっている。「過当競争に陥っているのではないか」という懸念が広がるなか、地方鉄道は赤字に苦しみ、廃止・縮小を余儀なくされている。

 こうした現状に対し、鉄道会社は次の一手をどのように打てばいいのだろうか。そこで鉄道事情に詳しい共同通信の大塚圭一郎記者とBusiness Media 誠で連載をしている杉山淳一氏に、徹底的に語り合ってもらった。対談は全7回でお送りする。


駅ナカビジネスの問題点

――駅ナカでのビジネスが盛り上がっていますね。

大塚:確かに駅ナカはビジネスとして成功している部分はあるのですが、次は「ご当地駅ナカ」という形で勝負してほしいですね。例えばJR西日本の子会社が近畿圏の主要駅で展開している物販店は、地域産品だけではなく大阪や京都、神戸の代表的な菓子もそろっているので、土産を買う際の選択肢の幅が広がります。

 このほかに自分で好きな具材をトッピングできるアイスクリームや、鉄道や自動車などの模型販売でも好みの色や部品を選べるようにするといった体験ができるものを考えてほしいですね。

 例えばJR東日本の子会社が運営しているエキュート。品川や上野などの東京都内の主要駅や大宮駅(埼玉県)に、どこか似ている部分がある。消費者は金太郎飴のような店であれば、やがて飽きがきます。なので、これからは「この商品はこの駅ナカでしか買えない」という独自性を追求してほしですね。

杉山:1つ1つ見ていくと、独自性のある店もあります。例えば品川駅であれば「QBGパティスリーα」というケーキ屋さんが、プラレール50周年ケーキを売っていました。今はもうありませんが、そのかわり「エクスプレスロール」という45センチのロールケーキを売ってます。電車のように長い、という触れ込みなんですが、もうすこし電車っぽいと買うんですけど(笑)。駅ナカを運営している鉄道会社とそこに出店しているテナントがもっと差別化をしようという意識が強まれば、もっといろいろなアイデアが出てくると思いますね。

 ただ今は駅ナカである程度の成功を収めてしまった。なので関係者は少し安心しているのかもしれない。今後、さらに厳しい競争が始まったときに、本当の戦いが繰り広げられるのではないでしょうか。

 JRの上野駅では、東北の名産を扱っている店を設置しました。また東京駅では駅弁の実演販売ができるらしい。キッチンでできたての弁当を作って販売するというので、注目しています。改札の外ですが、東京駅には東京おかしランドという一角があって、カルビーがポテトチップの揚げたてを売っています。

 でも、心配もあるんですよ。駅ナカがもうけすぎてしまうと、東京都の石原都知事が税制を変えるかもしれない(笑)。

駅ナカビジネスが好調……しかし問題点も
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