意外にオイシイ? 「誰も損しない」駅から歩こうイベント杉山淳一の時事日想(1/5 ページ)

» 2012年06月01日 08時01分 公開
[杉山淳一,Business Media 誠]

杉山淳一(すぎやま・じゅんいち)

1967年東京都生まれ。信州大学経済学部卒。1989年アスキー入社、パソコン雑誌・ゲーム雑誌の広告営業を担当。1996年にフリーライターとなる。PCゲーム、PCのカタログ、フリーソフトウェア、鉄道趣味、ファストフード分野で活動中。信州大学大学院工学系研究科博士前期課程修了。2008年より工学院大学情報学部情報デザイン学科非常勤講師。著書として『知れば知るほど面白い鉄道雑学157』『A列車で行こう9 公式ガイドブック』など。公式サイト「OFFICE THREE TREES」ブログ:「すぎやまの日々」「汽車旅のしおり」、Twitterアカウント:@Skywave_JP、誠Styleで「杉山淳一の +R Style」を連載している。


 「駅からハイキング」「駅からウォーク」なるイベントをご存じだろうか。鉄道会社が沿線の人々を対象に参加を呼びかけているものだ。

 駅に集合し、受け付けで参加登録すると地図をもらえる。その地図を頼りに街をひとめぐりしてゴールへ。参加証として記念品がもらえたり、参加ポイントに応じてプレゼントがあったりする。参加費は数百円程度、無料のイベントもたくさんある。

 鉄道会社によって「駅からウォーキング」や「駅から散歩」など呼び方もいろいろだから、とりあえずまとめて「駅から歩こうイベント」と呼ぶ。私は今までこのイベントを誤解していた。参加者にお年寄りが多いので「シルバー世代向けの慈善事業」とか「鉄道会社から沿線の人々向けの謝恩企画」だと思っていた。しかし、実際に参加して驚いた。これ、けっこうもうかるイベントだ。事業として捉えてもいい。

 参加は無料、または格安で半日ほど楽しめる。歩くので健康にもいいし、あいさつをきっかけに新しい友だちだってできる。孤独になりがちなお年寄りにとっては、社会参加のきっかけにもなるだろう。

 鉄道会社から見ると、イベント自体は無料または実費だけだったとしても、参加者が集合する駅まで電車に乗る。その運賃が収入になる。イベントに選ばれた自治体は景観や公園などをアピールできるし、街にとっては飲食店の収入につながる。「駅から歩こうイベント」は「誰も損をしない仕組み」になっているのだ。

西武鉄道のウォークイベント受け付け風景。手前の線路は休止中の安比奈線
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