「鉄道ツアー」のカラクリは、このようにできている杉山淳一の時事日想(2/5 ページ)

» 2012年06月08日 08時01分 公開
[杉山淳一,Business Media 誠]

「葬儀屋」と揶揄される「さよなら列車ツアー」

 日本旅行はJR西日本の子会社なので、鉄道との結びつきはもともと強い。日本旅行がJR西日本の列車で実施するツアーは、JR西日本からもプレスリリースが発表される。最近では「サロンカーなにわ利用『欧亜国際連絡列車100周年記念号の旅』」が発表され、すぐに満席となった。このツアーはもともとは日本旅行が催行する大阪発のロシアツアーの一部だった。豪華客船「パシフィックびいなす」を使い、敦賀とウラジオストックをクルーズするという旅で、この演出として往路に「サロンカーなにわ」を仕立てた。『欧亜国際連絡列車100周年記念号の旅』は、クルーズ利用客以外の列車の空席を活用するためのアイデアだ。

 このほかにも、日本旅行には鉄道ファンをターゲットとした鉄道ツアーが多い。特に2010年の「500系のぞみファイナルツアー」からは顕著で、東京発、大阪発とりまぜて現在まで20回近く催行されている。最近話題となった「ニコニコ超会議」のブルートレインツアーは、発起人こそ鉄道ファンとして有名な向谷実氏だが、実務的な部分は日本旅行が手がけている。日本旅行が実施した鉄道ツアーは次の通り。

催行日  ツアー名
2010年2月 500系新幹線「のぞみ」最終列車乗車プラン『500系のぞみファイナル』
2010年3月 「さよなら!スーパーサルーンゆめじ号」
2010年3月 『北陸、能登ファイナル』
2010年5月 RAILWAYS〔レイルウエイズ〕の舞台 島根県一畑電車を訪ねる旅
2010年6月 電車でGO! 向谷実氏企画 並大抵ではわからない ミステリーツアー
2010年7月 485系「リゾートエクスプレスゆう」でめぐるミステリーツアー
2010年8月 「山陽新幹線全タイプ制覇」ツアー
2010年12月 『キハ181系 かにカニはまかぜ 最終運転日乗車と浜坂カニ料理』ツアー
2010年12月 12 / 4出発限定 東北新幹線新青森開業一番列車はやて11号で行く青森フリープラン1泊2日
2011年2月 キハ181系ファイナル! 「ありがとうキハ181系」号
2011年3月 「485系雷鳥ついに引退 さよなら雷鳥」ツアー
2011年3月 ボンネット形よ永遠に 「ありがとう489系号」の旅
2011年6月 ひたちなか海浜鉄道 車両清掃応援と営業再開1番列車の旅
2011年8月 新・鉄子の旅メンバーと行く ひたちなか海浜鉄道応援ツアー 実施
2011年12月 鉄道写真家広田泉さんと行くなごみ&ひたちなか海浜鉄道の旅
2012年2月 日本から海を渡ったブルートレイン マラヤンタイガートレインに乗車するツアー
2012年3月 ありがとう 定期運行終了 寝台特急「日本海」 急行「きたぐに」ツアー
2012年3月 長野電鉄 屋代線 惜別特別企画 ありがとう屋代線の旅
2012年3月 「鉄道ファンによる、鉄道ファンのための企画会議ツアー in由利高原鉄道」
2012年3月 ありがとう100系&300系新幹線 山陽新幹線最終列車乗車プラン
2012年3月 ありがとう113系 阪和色 ツアー専用貸切列車乗車プラン
2012年4月 ニコニコ超会議特別ツアー 大阪発上野行きミステリーツアー
2012年4月 ニコニコ超会議特別ツアー お座敷列車「宴」ミステリーツアー
2012年6月 鉄道写真家広田泉さんと行く 姉妹駅提携記念企画第1弾 会津鉄道芦ノ牧温泉駅ひたちなか海浜鉄道那珂港駅 会津モリモリツアー
2012年7月 「サロンカーなにわ利用『欧亜国際連絡列車100周年記念号の旅』」

 これらの企画で特に目立つ文字が「ありがとう」「さようなら」「最終」などの文字だ。日本旅行の鉄道ツアーはほとんどが廃止される列車や車両をテーマにしている。廃止車両や廃止路線に集まる鉄道ファンを「葬式鉄」と呼ぶところから、親しみ(?)を込めて日本旅行を「葬儀屋」などと揶揄(やゆ)するファンもいる。

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