「鉄道ツアー」のカラクリは、このようにできている杉山淳一の時事日想(1/5 ページ)

» 2012年06月08日 08時01分 公開
[杉山淳一,Business Media 誠]

杉山淳一(すぎやま・じゅんいち)

1967年東京都生まれ。信州大学経済学部卒。1989年アスキー入社、パソコン雑誌・ゲーム雑誌の広告営業を担当。1996年にフリーライターとなる。PCゲーム、PCのカタログ、フリーソフトウェア、鉄道趣味、ファストフード分野で活動中。信州大学大学院工学系研究科博士前期課程修了。2008年より工学院大学情報学部情報デザイン学科非常勤講師。著書として『知れば知るほど面白い鉄道雑学157』『A列車で行こう9 公式ガイドブック』など。公式サイト「OFFICE THREE TREES」ブログ:「すぎやまの日々」「汽車旅のしおり」、Twitterアカウント:@Skywave_JP、誠Styleで「杉山淳一の +R Style」を連載している。


ツアー参加者に記念写真用のプレートを用意している

 鉄道会社は鉄道ファンの集客にそれほど熱心ではない。特にJRや大手私鉄では、旅客といえば通勤、通学、観光などのお客が主となり、これらは平日需要、休日需要などの大きな視点で捉えられている。鉄道ファンという旅客対象はかなり小規模になる。鉄道会社にとって、鉄道ファンに関心があったとしても、規模が小さいために追い切れないという事情があるかもしれない。

 そんな鉄道会社のマーケティングを補完すべく、鉄道ファンを獲得する会社がある。旅行代理店だ。旅行代理店は顧客の趣味や志向に合わせたパックツアーをいくつも企画しており、細かい需要に対応できる。鉄道趣味層へのアプローチもそのひとつにすぎない。

 しかし、鉄道ファンは団体旅行を好むのだろうか。言葉に不慣れでガイドが必要な海外ツアーならともかくとして、国内パックツアーに参加する鉄道ファンは多いだろうか。なぜ私がそう感じるかといえば、自分自身、国内パックツアーに参加した経験がないからだ。乗りたい列車があれば自分でチケットを手配できるし、時刻表を片手にスケジュールの作成も自在。宿泊先もインターネットの予約サイトで予算に応じて選べる。

 「旅にでたい、でもどうしたらいい分からない」という団体旅行はそんな人をサポートする仕掛けだと思っていた。しかしそれは誤解だったようだ。日本旅行の「鉄道ツアー」には、鉄道の達人も喜ぶ仕掛けがあった。

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