「1人1票でないと多数決は保障されない」――1票の格差裁判の升永英俊弁護士に聞く東京の1票の価値は鳥取の4分の1(4/4 ページ)

» 2012年06月15日 10時00分 公開
[堀内彰宏,Business Media 誠]
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フランス大統領選は1人1票でないと結果が違っていた可能性も

――最後にこれだけは言いたいということがあれば。

升永 時事通信が2月に行った世論調査によると、国民が首相を直接選ぶ首相公選制に賛成が74%、反対が14%、無回答が12%でした。無回答を除くと、84%の回答者が国民が首相を直接選ぶことに賛成です。国民が直接首相を選ぶ場合、国民投票法によって行います。国民投票法では、1人1票が明記されています。「憲法改正なしで、国民投票法を改正して首相公選を行うこと」を選挙公約している政党は、今のところ、みんなの党1つです。

 国民の84%が1人1票で首相を選びたいと思っている可能性があるにも関わらず、今はそうなっていません。みんなの党が政権政党になる、あるいは、みんなの党に加えて、他の政党も意見を変えて、1人1票で首相を直接選ぶようにすることに賛成すれば、首相公選のための国民投票法の改正は成立するでしょう。また、みんなの党は1人1票の選挙制度も公約しているので、1人1票の法案も成立するでしょう。

 私は、次のようなスケジュールを考えています。「憲法改正無しの事実上の首相公選」を選挙公約する政党(複数の政党を希望します)が、次回選挙で合計で例えば1500万票得票することは、十分可能でしょう(2010年参院選でみんなの党は800万票得票している)。

 メディアも、次回選挙で「憲法改正なしの事実上の首相公選」を選挙公約する政党(複数の政党を希望します)が1500万票も得票したとなると、今と違って、その政党の「憲法改正なしの事実上の首相公選」の主張を広く報道するようになるでしょう。

 国民の84%は「国民が首相を直接選ぶ」制度を支持する可能性があります。従って、次々回選挙では、国民の過半数は「憲法改正なしの事実上の首相公選」を選挙公約する政党(複数の政党を希望します)に投票すると推測されます。そうすれば、憲法改正なしの事実上の首相公選は実現されます。

 元神奈川県知事の松沢成文氏が「首相公選制.com」というWebサイトをやっていて、首相候補の模擬投票を行っています。5月31日の中間結果の時点で3066人が投票していて、現職国会議員では、1位は「いない」で、2位は渡辺喜美氏、3位は小泉進次郎氏でした。国会議員以外では、橋下徹氏が1位で、石原慎太郎氏が2位でした。

首相公選制.com

 もう1つ、先日のフランス大統領選挙では、勝利したオランド氏の得票率が51.6%だったのに対し、サルコジ氏は48.4%でした。オランド氏は、50%を1.6ポイント上回っているだけです。大統領を選ぶといった重要な国政事項になると、国民の多数意見と少数意見が僅差になることが少なからずあるわけです。4年前の米国大統領選挙でも、オバマ氏が53%だったのに対して、マケイン氏は46%でした。

 もし仮に、フランス大統領選で“清き0.9票”の住所差別があったとしたら、サルコジ大統領が誕生している可能性があるわけです。そして、フランス大統領選でも、米国大統領選でも、1人1票です。

 歴史的に国の重要な政策は、しばしば賛成、反対が接近してきます。国民の多数意見は何であるかという時に0.9票しかない人がいたら、民主主義の根本ルールである「国民の意見の多数決ルール」に反します。これは、ぜひ書いてほしいですね。

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