大阪都構想のカギを握るのは、モノレールかもしれない杉山淳一の時事日想(4/5 ページ)

» 2012年06月22日 08時08分 公開
[杉山淳一,Business Media 誠]

健全な第3セクターへ、そして民営化へ

 松井知事が延伸を検討すると表明した区間は、2004年に近畿地方交通審議会が当時の運輸省に答申した「近畿地方における望ましい交通のあり方について」(答申第8号)で、「中長期的に望まれる鉄道ネットワークを構成する新たな路線」と定義されている。大阪・京都の鉄道路線整備はこの8号答申に基づいて実施されており、京阪電鉄中之島線、阪神なんば線、大阪市営地下鉄今里筋線、近鉄けいはんな線などが開業している。大阪モノレール延伸区間の都心寄りには、貨物線を再利用したJRのおおさか東線の整備が進められ、一部が開業している。

 一方、大阪モノレールは答申8号から2年後の2006年に「中長期経営計画」を発表した。同社は2001年から2005年まで5期連続の単年度黒字を達成した。これを受けて、2006年以降2015年までを「成長・発展期」と定義している。この中で「今後の検討課題」として、彩都線の彩都西―東センター駅間延伸と、門真市伊南の延伸について触れている。彩都線については延伸先の開発が停滞していることから「開発に合わせて開業する」とし、門真市以南については「収支採算性の検討と、経営基盤の確立を図る」とした。

 大阪モノレールとしては、現在の黒字傾向を維持し、大阪空港駅開業までに積み上がった債務の解消を進めたいところだろう。せっかく黒字になった経営状態を、新線開業で赤字転落という事態は避けたい。大阪府は橋下知事時代から、第3セクターについては整理していく方針を示している。赤字の第3セクターは廃止し、黒字の第3セクターは民営化するという。その方針が継続するとすれば、大阪モノレールは民営化の方向である。

モノレールの窓から見える大阪国際(伊丹)空港(左)、車窓の名所、万博記念公園(右)

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