「そんな甘っちょろいことを言ってるから、暴力団につけこまれるんだよ」という批判はもっともだが、人の「後ろめたさ」につけこむのが裏社会の違法ビジネスの特徴だ。この構造を理解するにはヤミ金が分かりやすい。
ヤミ金とは、違法な金利でカネを貸し付ける業者のことで、近年、警視庁は数が減って喜んでいる。しかし、それは単に「摘発数」のことだ。110番に「ヤミ金に殺されます」と通報してきてワンカウントというわけだが、これは現実とかけ離れている。
ヤミ金を借りる人たちは「被害者」だが、「後ろ暗い人」でもある。警察にヤミ金をタレ込んで、パクらせたらそいつから借りたカネはチャラになる。だが、取引先を売るような人間は、他のヤミ金からも相手にされない。
貸金業改正による総量規制で、年収の3分の1などのルールがもうけられ、これまで消費者金融からカネをつまんでいた人たちはヤミ金しかすがれない。原監督と同じで、警察にタレ込むと失うものの方が多過ぎるのだ。
日本の警察は大変優秀だが、目の前に高橋克也がいても「似てない」とか言ってしまうくらい天然ボケでもある。だから、この手のSOSを出せない犯罪を、チカンや交通違反と同じくくりでカウントして、「ヤミ金は絶滅寸前」と無邪気に喜んでいる。貸金業法改正という追い風もあるのだから(関連記事)、摘発数が減っているのは、むしろ深刻な事態と受け止めるべきだ。
原監督や高橋克也のように追いつめられないと、この手の犯罪の被害者は声をあげない。スポーツ界や芸能界、政界には似たような脅迫ビジネスの被害者はゴマンといる。
実はこのあたりの構造は、メディアは誰よりも詳しい。例えば、「ハラっちゃダメでしょ」としたり顔で言っているあの週刊誌も、何を隠そう、数カ月前に記者が美人局にあって、それをネタに攻撃してきた右翼団体に示談金100万をハラっちゃっている。
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