「長距離鉄道旅行」の終焉が、近づいてきた杉山淳一の時事日想(3/5 ページ)

» 2012年07月27日 08時02分 公開
[杉山淳一,Business Media 誠]

長距離旅行の変化、シンプルな新型きっぷの誕生

 周遊きっぷ衰退の理由はいくつか考えられる。新しいフリーきっぷの開発と、鉄道の旅の変化だ。

 JR化以降、魅力的な企画きっぷがたくさん登場して、相対的に周遊きっぷの価値が下がってしまった。例えば北陸方面の旅を考えると、東京からは新幹線や特急も使える「北陸フリーきっぷ」がある。これはわずかな差額でグリーン車用も購入できる。いまはなき寝台特急「北陸」のB寝台も差額なしで使えた。大阪からは2名からの利用で「金沢・加賀ぐるりんパス」がある。他の地域も「往復きっぷ+フリーパス」というスタイルのきっぷがいくつか登場している。

 また「現地で購入できるフリーきっぷが増えた」という事情もありそうだ。「ワイド周遊券」発足時とは違って、現在は全国各地にフリーきっぷがある。国鉄の現地購入型フリーきっぷの元祖は1971(昭和46)年に発売された「国電フリー乗車券」で、エリアは23区内限定だった。有効期間は1日のみ。現在の「都区内パス」にあたるきっぷだ。こうしたフリーきっぷは少なく、あったとしてもエリアが狭かった。当時は乗り降り自由の旅をしたければ、「ワイド周遊券」「ミニ周遊券」を買うしかなかった。

 30年以上も前、当時小学6年生の私は、「国電フリー乗車券」では物足りないと感じ、東京住まいにもかかわらず「東京ミニ周遊券」を買うために静岡まで出かけた。静岡は東京から最も近い発売駅だった。「東京ミニ周遊券」のフリーエリアは、東京都、埼玉県、神奈川県、千葉県北部。現在の「休日おでかけパス」とほぼ同じだ。私は東京近郊の電車をすべて乗りつくそうと思っていたので、静岡発着の「東京ミニ周遊券」を買ってもモトがとれた。

 しかしいまは都内で「休日おでかけパス」を買えばいい。他の地域も「北海道フリーパス」「四国フリーきっぷ」など、現地で買えるフリーきっぷがたくさんある。これらのきっぷは「周遊きっぷ」よりシンプルなルールで手軽に買える。売る側もきっぷの名前を聞いて端末を叩いて発券するだけだ。

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