地方鉄道が、バスやトラックに負ける日杉山淳一の時事日想(3/5 ページ)

» 2012年09月14日 08時01分 公開
[杉山淳一,Business Media 誠]

JR西日本はローカル線をバス転換する方針

 三江線を運行するJR西日本は、赤字ローカル線については廃止、バス転換する方針だ。2010年4月には「廃止候補路線の沿線自治体へバス転換を打診している」と報じられた。この時は具体的な路線名を明かさなかったようだ。しかし今年(2012年)7月26日には、同社社長が「例えば山越えの路線で」と条件を挙げ、「老朽化した設備を更新するより、バスのほうがいいのではないか」と時事通信のインタビューに答えている(参照リンク)

 ローカル線廃止の方針は、もっと前からJR西日本の態度に現れていたように思う。三江線について言えば、2006年7月に豪雨のため38カ所で土砂崩れが発生し、全線復旧まで1年を要した。この時は木次線・美祢線も運休した。美祢線については地元の早期復旧要望に対し、将来的には廃止したい意向を伝えていた。2010年12月の社長会見で、大糸線の南小谷-糸魚川間、氷見線、城端線について経営継続が困難とし、地元自治体と協議する意向を示した。

 また、今年1月から3月まで、豪雪により三江線と大糸線でバスまたはジャンボタクシーによる代行輸送を実施した。除雪コストが輸送成績に見合わないからであろう。

 北国のローカル線存続理由に「鉄道は雪に強い」「道路が積雪で不通になったときは鉄道が頼り」があるが、いまや積雪での鉄道の優位性は失われつつある。幹線道路は自治体が除雪してくれるので、自前で線路を除雪する列車より、バスのほうが格段にコストが低い。

 許容限度を超える赤字線は廃止したい。これがJR西日本の本音だ。ただし、従来の路線単位での判断ではなく「山越え」という区間で判断しようとしている。JR西日本で山越えの路線といえば中国地方である。三江線・芸備線・木次線・姫新線・因美線の一部区間が対象になるだろう。山越え区間が廃止になれば、前後の区間は行き止まり線となってしまい、「乗客数低下→廃止」という流れにもなりそうである。

三江線の列車時刻表(上り)。増発実験バスの時刻を赤字で追加。中間部の区間の増発は少ない

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