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» 2012年09月25日 08時00分 公開

アニメビジネスの今:5年ぶりに制作分数が増加、レポートから見るアニメ業界の現状 (4/5)

[増田弘道,Business Media 誠]

気になる海外売上の状況

 先ほどの表で示した各セクションの詳細は産業レポートに譲るとして、1つだけ懸念されるのが海外売上である。2005年には313億円だったアニメ業界海外推計市場が、2009年には153億円と半減。その後、2010年には172億円、2011年には177億円と持ち直しているものの低迷気味であるのは確かである。

 これには2つの原因がある。1つは2008年以降の円高によるもので、2007年に1ドル=117.9円であったのが、2008年104.2円→2009年93.5円→2010年88.1円、2011年には79.9円まで上がった。もう1つは、日本のアニメがヤングアダルトを対象としており、その収益源となっていたビデオパッケージが急速に縮小したこと。

為替相場推移(出典:Yahoo!ファイナンス)

 これらの要因により、海外市場売上が低迷することになったのだが、実はドルベースでの売り上げを見ると急激に落ち込んだ2009年からは持ち直しているのである。これは、リーマンショックによる市場への打撃はあったものの、世界的に見るとアニメーション市場が拡大していることに起因している。

世界レベルで成長しているアニメーション

 産業レポートの記述にあるように、世界的には新興国を中心にテレビ販売数、放送広告売上は成長を遂げている。アニメーションについて世界的なレベルでの統計はないが、子どもなどの若年層の人口比率が高い新興国において、放送需要を中心としたアニメーションが求められることは容易に想像できる。従って、世界レベルではアニメーションはまだまだ成長産業なのである。

 ただし、世界市場で求められるのは圧倒的にキッズ・ファミリー(3歳〜15歳)対象なので、日本が得意とするヤングアダルト層向けのものは、子どもを基準としたセンサーシップの観点から放送されることは難しい。もちろん、日本にも優れたキッズ・ファミリー作品はあり、すでに広く海外で展開されているものもあるが、国内では製作数が減る傾向にあるため、今後は意識的な戦略を取らない限り海外での伸張は難しいだろう。

 そして、それを踏まえてスタートしたのが電通系の電通エンタテインメントや三菱商事系のディーライツが始めたプロジェクトである。両社とも調整の難しい国内展開をパスして、最初から世界のキッズ・ファミリー層をターゲットにした作品を製作、今年から米国のニコロオデオン、カートゥーン・ネットワークといったグローバルなアニメーション・ケーブルチェーンでオンエアを始めた。両社のこの試みは先駆的なケーススタディとして見守る価値があるだろう。

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