多死社会の入口で感じた「悲しくて楽しい」こと郷好文の“うふふ”マーケティング(1/3 ページ)

» 2012年10月11日 10時00分 公開
[郷好文,Business Media 誠]

著者プロフィール:郷 好文

マーケティング・リサーチ、新規事業の開発、海外駐在を経て、1999年〜2008年までコンサルティングファームにてマネジメント・コンサルタントとして、事業戦略・マーケティング戦略など多数のプロジェクトに参画。2009年9月、株式会社ことばを設立。12月、異能のコンサルティング集団アンサー・コンサルティングLLPの設立とともに参画。コンサルタント・エッセイストの仕事に加えて、クリエイター支援・創作品販売の「utte(うって)」事業、ギャラリー&スペース「アートマルシェ神田」の運営に携わる。著書に『顧客視点の成長シナリオ』(ファーストプレス)など。中小企業診断士。ブログ「cotoba


 最近、「生老病死(しょうろうびょうし)」を考える機会があった。

 「生まれる、老いる、病む、死ぬ」の4つ、必ずやってくる苦悩。生きるのはとかくツライ。老いる、病むはもっとツライ。死ぬのもたぶん苦しいが、長いトンネルに入れば楽になるのかも。そんなにツライなら、せめて本人はトンネルに入るまで、まわりは見送ったあとも、楽しくありたい。

2005年を境に生と死が逆転

 世界に冠たる少子高齢化社会ニッポン、どういう社会になるのか。

日本の将来人口 出典:厚生労働省人口動態調査、人口問題研究所 日本の将来推計人口の中位推計

 年間出生数は2005年に110万人を切った。数年中に100万人を割り、やがて80万人台になると見込まれる。所得の低迷、結婚願望の薄れ、共働きしにくい社会……。いろいろ原因はあるが、やがて「今日はね、子供を2人も見たよ」という時代になりそう。

 一方高齢化社会はますます進む。人口の1/4が高齢者となるのも近いが、2005年にはもうひとつ転機があった。出生者数より死亡者数が上回ったことだ。2012年には120万人が死んだ。

 生より死が多い「多死社会の到来」である。団塊世代が80代になる2030年代、年間160万人がバタバタ死んでゆく。今よりもっと劇的に人口は減少する。少子高齢化社会の実態は「少生多死社会」なのである。

 未来の日本を空の上から観てみよう。

多死社会の到来

 子供がレアな爺さん婆さん社会では、生産人口が減り消費人口も減る。一国経済で見れば、中国に抜かれたGDPはその他の国にもどんどん抜かれる。「エエじゃないか、分母が減れば1人当りGDPは伸びる、豊かな国になれる」という人もいる。

 いや全体のパイが小さくなると競争心も薄れ、「小さく生きよう」とみんなの心が縮む。その兆候はデフレ社会に表れている。輝くスポーツチームを見よ。チーム内に競争がありスターがいるからこそ、みんな向上心を持つ。弱小チームが「弱肉but強食(弱きものが強きを食う)」になる方がレアだ。

 だが難しい少子化対策は政府にまかせて、私は「楽しい多死社会」を考えてみたい。なぜならこの原稿を書く数日前、母を看取ったからだ。

 長らく癌を患い、手術もして片肺で8年間生きて、副作用の強い薬に苦しんで入退院を繰り返した。末期は積極的な延命治療を行わなず、痛みを減らす緩和ケア病棟で逝った。

 多死社会では「幸せに看取られること、看取ること」がテーマになる。

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