なぜ鉄道映画が注目されているのか――『旅の贈りもの』制作者インタビュー(前編)杉山淳一の時事日想(2/9 ページ)

» 2012年10月19日 08時00分 公開
[杉山淳一,Business Media 誠]

JR西日本の協力で生まれた作品

杉山:『旅の贈りもの 明日へ』では、ある駅の同じ角度から、旧型電車が来る場面と新型電車が来る場面をつないでいました。時代の流れを車両で表現しているんですね。

竹山:そうです。主人公の少年期と現在の時の隔たりみたいな部分を、あえて「雷鳥」と「サンダーバード」(681系・683系電車。489系に代わり、大阪と北陸を結ぶ特急列車)でやりました。

杉山:駅はそのままで、役者さんと車両が変わる。鉄道をよく分かっている方が作ったんだなあと思いました。

竹山:分かっているというか……JR西日本さんのおかげです。僕は鉄道ファンだと思われているみたいですけど(笑)、実際は何も知らなくて、その都度JR西日本さんに教わったんです。

 JR西日本さんとのお付き合いは長くて、始まりはテレビドラマでした。2004年に放送した『新幹線をつくった男たち』です。テレビ東京の開局40周年ドラマでした。

杉山:テレビ東京と新幹線は同じ年、1964年生まれなんですね。

竹山:当時、新幹線0系電車(初代東海道新幹線車両)はJR西日本にしかなかったんです。JR西日本さんはとても協力的で、例えば新幹線の車輪のそばにCCDカメラを付けさせてくれる。スピード感を出すには車輪なんですよ。でも、営業車両でやるわけにいかないから、実はその場面はドクターイエロー(新幹線の保守点検用車両。車体は黄色。客室にあたる部分に検査装置を搭載し、台車や架線、パンタグラフなどを観測できる)で撮りました。パンタグラフもドクターイエローの検査用窓から。架線から火花が出るところを撮ったんです。本物の0系じゃできませんから。いろいろ交渉して、危険なことはしないけれども、カメラの小型化などの進歩もあったし、お互いに経験を積んで、協力してくださったんです。

489系「雷鳥」の後継車両「サンダーバード(681/683系)」。車両が新しくなっても、旅の本質は変わらない

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