なぜ鉄道映画が注目されているのか――『旅の贈りもの』制作者インタビュー(前編)杉山淳一の時事日想(3/9 ページ)

» 2012年10月19日 08時00分 公開
[杉山淳一,Business Media 誠]

「車両の魅力」から構想が始まる

2006年に公開された『旅の贈りもの 0:00発

杉山:JR西日本にとっても良い経験でしょうね。映画人はこういうふうに撮りたいんだ、というような。

竹山:いまのJR西日本の担当部長さんとはその時からのお付き合いで、今でも大阪へ行った時は、たとえ別の仕事の時でもご飯を食べたりしてね。

杉山:それが、前作『0:00発』につながったと。

竹山:実は、JR西日本さんから映画を作りたいので相談にのってもらえませんか? という話をいただいて出向くと、提案された企画は「新幹線を使ったラブストーリー」。でもそれって、JR東海さんがCMでやってたシンデレラ・エクスプレスみたいでしょう。

 次の企画がは「新幹線の運転士と女性車掌のラブストーリー」で、それも似たようなテレビドラマがあった。新幹線ではなくて、JR西日本さんに残っている国鉄時代の貴重な列車はないんですか? と言ったら、「EF58」と「マイテ49」がありますよ!  と言われ、これだ!  と思いました。

杉山:直感したんですか?

竹山:はい。この列車を想定してストーリーを書いて、ロケで使った列車のツアーもやって、映画は3カ月間のロングヒットになりました。その時の僕は「マイテのマってなに?」というくらいで、鉄道の知識はなかったです。

杉山:なるほど。映画の他の取材と同じ要領で取材していったと。

竹山:EF58とマイテで1本目をやって、2本目は何がいいんだろうと。何があるの? ってJR西日本さんに聞いたんです。鉄道ファンが気に入ってくれる車両がすぐに思い当たらないみたいで。そのうちにリーマンショックなどの資金不足で制作が延び延びになりまして。

杉山:だから6年後に第2弾なんですね。

竹山:2006年に『0:00発』を作った時、ロケハンに行った車庫で「クハ489」(489系の先頭車。「ク」は運転台付き、「ハ」は普通車を示す。ボンネットタイプでレトロな雰囲気)を見たんですよ。それを写真に収めて残しておいたんです。この電車は使えませんかと言ったら、もうすぐ廃車で車籍(鉄道車両の戸籍。自動車で言うところの車検証。鉄道車両は定期検査をして国に届け出てから、鉄道会社に在籍させる)を失っちゃうから、走れないんだ」と。「じゃあその車籍を延ばせないんですか?」って話をしたら、JR西日本さんが各所の調整をしてくれ、撮影終了まで車籍を伸ばしてくれたんです。

 既に引退した489系を撮影のために走らせる。ロケ地が決まり、走行区間が決まり、そこからストーリーを作ったんです。で、秋に撮影しようと思ったけど、桜が物語の鍵になるので、車籍を2回延ばしてもらいました。

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