根本的に間違っている就活と就職支援(1/2 ページ)

» 2012年11月02日 08時00分 公開
[川口雅裕,INSIGHT NOW!]
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著者プロフィール:川口雅裕(かわぐち・まさひろ)

イニシアチブ・パートナーズ代表。京都大学教育学部卒業後、1988年にリクルートコスモス(現コスモスイニシア)入社。人事部門で組織人事・制度設計・労務管理・採用・教育研修などに携わったのち、経営企画室で広報(メディア対応・IR)および経営企画を担当。2003年より株式会社マングローブ取締役・関西支社長。2010年1月にイニシアチブ・パートナーズを設立。ブログ「関西の人事コンサルタントのブログ


 いくつかの選択肢に対して、勘に頼っていい加減に選んだ結果と、吟味を重ねて選んだ結果は、どちらが正しくなるだろうか。選ぶのに必要な情報がモレなく揃っており、それを処理・判断する能力があり、得た情報がその後も変わったりしないときには、いい加減に選ぶよりも、吟味を重ねた方が正しい選択となる。

 しかし、情報にモレがあったり、それを処理・判断する能力に欠けていたり、その情報が後で変わるようなことがあったりするなら、いくら吟味しても正しく選択することはできない。解くために必要な知識を持たない問題が出たら、考えて選択しても、鉛筆を転がしても結果は似たようなものになるのと同じである。

 悪いことに、吟味にかけた時間や労力が大きければ大きいほど、選択を間違ったことに対する後悔が大きくなる。鉛筆を転がして決めた場合よりも、真面目に考えて決めた場合の方が、「正解できたかもしれないのに……」と考えてしまう。鉛筆を転がして決めたのなら、間違っても仕方ないと割り切るしかない。

 選択肢を増やすと、余計にこの傾向が強まる。選択肢が増えれば増えるほど必要な情報も増えていき、処理・判断する能力が求められるので、正解する可能性は低くなる。選択肢が少なければ正解できたのに、目移りしたり、迷っている間に時間がなくなったりして、間違うようなことも起こる。後で選択を悔やむ可能性も高まる。だから、選択肢が多い状況も潤沢に情報があることも、幸せとは言えない。

 新卒の就職活動では、「できる限りたくさんの情報を収集し、積極的に会社訪問などを行い、自分の適性も見極めた上で“いい会社”を選択しよう」という考えが支配的だ。大学も活動量を増やしなさいと指導するし、とにかく多くの会社にエントリーしようとする学生も多い。一見マトモで、そのような姿勢の方が適切な選択をできるように思われる。

 しかし、現実は逆だ。昔に比べて、はるかに熱心に会社選びをしているのだから、昔より間違いのない選択ができるように思われるが、例えば、入社3年以内に退社する割合が、鉛筆転がしのような会社選びをしていたころに比べて10%程度増えているように、ミスマッチが問題となっている。

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