それでは人材育成の状況に入るが、まずその前提となる各社の採用状況について述べてみたい。次図は161社の採用頻度についてのデータだ。「毎年採用」が46%、「不定期採用」が40%と、合わせて86%のスタジオが現場人員を採用している。不定期採用については、毎年の採用ではなく、人員が不足した時に行う随時募集である可能性が高いが、流動性が高い業界であることを考えれば定期採用以上の頻度であると思われる。
ちなみに、これは「動画」「仕上げ」「美術・背景」「撮影」に限った数字。そのほかの職制、例えば制作なども含めた全体の採用頻度もかなり高いのだが、それは専門学校に来る求人数などからうかがい知ることができる。
具体的な採用数は次表の通り。動画が70社で313人、仕上げが23社で65人、美術が21社で46人、撮影・編集が22社で50人と、これら4つの職種で474人という実績だった。回答は得られなかったが明らかに採用していると思われる会社もあるので、アニメ業界全体でこの2〜2.5倍の採用があると考えると、動画だけでも年間700人以上に就業機会が与えられていると思われる。
順位 | 職種 | 社数 | 採用人数 | 平均採用人数 |
---|---|---|---|---|
1 | 動画 | 70社 | 313人 | 4.5人 |
2 | 仕上げ | 23社 | 65人 | 2.7人 |
3 | 美術・背景 | 21社 | 46人 | 2.1人 |
4 | 撮影・編集 | 22社 | 50人 | 2.1人 |
「日本のアニメ企業は新人育成を行っているか」という問いに対しての答えだが、161社のうち「研修制度がある」と答えた会社は97社(60.2%)。また、制作現場を持たない企業も13社あるので、それを除くと「ある」の割合は65.5%と、ほぼ3分の2となる。
ほかの業種と比較してどうかという問題はあるが、ちまたで言われている以上にしっかりと研修をやっていると筆者は感じた。研修を担当しているのは「同部署の先輩」が一番多いようだ。
順位 | 研修者担当者 | 合計 |
---|---|---|
1 | 同部署の先輩 | 77社 |
2 | 社内の専門家(ほぼ新人担当が決まっている) | 16社 |
3 | 外部の専門家 | 6社 |
4 | その他 | 4社 |
研修内容については「線の練習、クリーンアップ、中割(振り向き、歩き、走り)」「動画入社より2年間は原画の人が指導に。2年後は原画に手ばなしになるまで作監がつく」「日本画の筆。ポスターカラー私用で背景の模写。少しずつできそうなところから、部分的にやらせてみる」といった回答があった。
研修期間は3カ月が48社と最も多く、ほとんどは2〜6カ月の間に収まった。中小企業が多いので、半年以上の研修はかなり大変なためだろう。
期間 | 社数 |
---|---|
24カ月 | 1 |
12〜24カ月 | 1 |
12カ月 | 4 |
6カ月 | 11 |
3〜6カ月 | 5 |
3カ月 | 48 |
2カ月 | 8 |
1〜3カ月 | 1 |
1カ月 | 8 |
半月 | 1 |
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