何が必要なのか? ストーカー殺人を繰り返さないために窪田順生の時事日想(2/3 ページ)

» 2012年11月13日 08時01分 公開
[窪田順生,Business Media 誠]

“モンスター”が生まれてしまうワケ

 想像してほしい。そういう勘違いをしている男のもとに屈強な男たちがやってきて、自分を捨てた憎き女の名前を読み上げてガチャリと手錠をかける。「犯罪者」とされたことで、かえって憎しみが増幅して、さらなる“モンスター”が生まれてしまうのだ。

 すいぶん知ったことを言うじゃないかと思うかもしれないが、こういう人たちの考えはよく知っているつもりだ。桶川ストーカー殺人からしばらく後、新潟で誘拐した小学4年生の少女Aさん(当時9歳)を9年2カ月間監禁していたという事件があった。

 詳細は良かったら拙著『14階段――検証 新潟少女9年2カ月監禁事件』を読んでいただければ幸いだが、この本をムショで読んだ犯人から手紙が送られてきて、しばらくやりとりをした。

 細かい話はこれまで週刊誌などで紹介したが、最も大事なのはこの男がまったく反省しておらず、それどころか不当な裁きを受けた「被害者」だと思っているということだ。

 この話をすると、みんな「バカじゃないか、そんなヤツは一生ムショから出すな」とか「もっと厳しい刑罰を与えろ」とか言うのだが、本人がそう信じて疑わないのだからしょうがない。

 しかも、彼は極度の不潔恐怖症のため刑務所内のルールや刑務官の言動をすべて「虐待」に感じている。自分の訴えを聞かず、人権侵害までする司法への恨みは、そのまま社会への憎しみにつながっているのだ。

 犯人は私によこした手紙のなかで、こんなことを言っている。

 《ゲバ刑(千葉刑務所の意)より苛めに苛め続けられて居る此の私が、心成らずも社会へと憎悪の炎を燃やす悪人へと変心したと為しても何等不思議は無く》

 こんな精神状態のまま彼は4年後シャバに出る。満期出所した一般市民なので警察が監視したり、拘束したりはできない。極端な話、Aさんのもとへ向かっても構わないというわけだ。

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