もんじゅ元所長“ミスタープルトニウム”が語る原発推進論(2/4 ページ)

» 2012年11月15日 00時00分 公開
[堀内彰宏,Business Media 誠]

 もんじゅの計画自体は30年前からスタートしているのですが、立地を決めるのに時間がかかりました。1995年にスタートして、電気を起こして、送電も開始しました。しかし、1995年に放射性ではない二次系のナトリウムもれが起きて、その後、15年間の空白ができました。

 現在と同じように「将来、この技術が必要かどうか」という議論が国レベルで行われて、日本は「従来通り継続していく」という決定をして、リスタートしたのが2010年です。その間に裁判における闘争など、いろいろありました。

 2010年にリスタートしたのですが、その後、IVTM(炉内中継装置)の落下事故があって、現在、その修復は終わっているのですが、まだリスタートする状況にはなっていません。ただ、人間の体でいえばまったく健全になっていて、準備運動すればスタートできる状況にあります。

 次画像は、2010年の中央制御室でのリスタートの瞬間です。

もんじゅの中央制御室

 もんじゅは28万キロワットの電気を出します。大きく分けて、次画像のドームの中が炉心で、その中を流れている冷却材が一次系のナトリウムです。そして真ん中が、炉心から出てきたナトリウムの熱を、きれいな(放射性でない)ナトリウムに伝え直して外へ取り出すための二次系の容器です。その後は軽水炉と同じように、熱を水に伝えて蒸気を発生させて電気を起こすというシステムです。

もんじゅの仕組み(注:sodium=ナトリウム)

 もんじゅでは、プルトニウム含有量が20%ほどのMOX燃料※を使っています。炉心の周りには、プルトニウムを増殖するためのブランケット燃料も入れてあります。

※MOX燃料……再処理工場で使用済み燃料から取り出したプルトニウムに、二酸化プルトニウムと二酸化ウランを混ぜてプルトニウム濃度を高めたもの。これをウランの代わりに燃料として使うことをプルサーマルという。

 昨今の福島の事故を受けて、崩壊熱をどうやってとるかという技術が問題になっていますが、福島の場合は海水ですが、もんじゅの場合は空気冷却です。

 また、津波に関連してですが、たまたま地形がそういうことが幸いしたのですが、崖に切り開いて建てている関係で、電源設備などが結果的に全部上の方に配置されています。津波を極端に意識したわけではないのですが、そういった対策が結果的にとられているということです。

 最近、「もんじゅや核燃料サイクルについて、今後どうするんだ」という議論があり、一部にある反原発の動きの中では「やめるべきだ」「必要ない」という声もたくさん出ていますが、我々としては基本的に粛々と継続し、さらに技術を発展していこうということで、いろんな取り組みをしています。これからどういう政権になるかも非常に大きいと思いますが、青森の(再処理工場での)核燃料サイクルと(高速増殖炉の)もんじゅが両輪として継続していくという考えで今、進めていますし、多分そういう方向の結論になるだろうと私たちは期待しています。

 もうひとつ、その中で福井県や青森県といった地方自治体とは、これまで信頼関係を構築してきましたが、今後どうするかについてはステークホルダーとしての地方自治体の意見は大きいと思います。

 そして大きな問題として、使用済み燃料、それから再処理した後に出てくる高レベル廃棄物をどうするかということがあります。やはり再処理して処分する方がより合理的で、使いっ放しでそのまま処分するのは不可能に近いと思います。

 米国でも基本的には長期貯蔵という考え方です。なぜなら少し細かい専門になるのですが、見方を変えると放射性廃棄物は一般廃棄物とは違い、来世紀くらいの技術であれば、中に入っている有用な金属をリサイクルできる可能性を秘めている宝でもあるからです。そういう見方もこれから必要になってくるのではないかと思います。

 この機会をご縁にもんじゅを視察いただきたいと思いますが、敦賀半島は関西電力や日本原子力発電の原子力発電所もたくさんあり、有効な見学ができるので、声をかけていただきたいと思います。

 ちょうど都知事を辞めてしまいましたが、2カ月前に石原都知事がもんじゅを訪問されました。1時間以上かけて、配管の中をぐるぐる回っていただいて、しっかりと見ていただきました。2日間一緒だったのですが、意外と元気で、また国会に出るのかなという感じでしたが、積極的にもんじゅをご支援していただいています。

もんじゅを視察する石原慎太郎氏(一番右)

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