もんじゅ元所長“ミスタープルトニウム”が語る原発推進論(1/4 ページ)

» 2012年11月15日 00時00分 公開
[堀内彰宏,Business Media 誠]

 9月に「2030年代に原子力発電所の稼働ゼロ」という方針を示した野田政権。東日本大震災での福島第一原発事故が国民的な議論を喚起し、従来の原発推進路線から脱原発へ方針転換されることとなった。

 政府が行った意見聴取会などでは脱原発方針を支持する声が多数を占めたが、一方で原子力発電を続けるべきだと主張する声も少なからずある。その1人が、原子力研究バックエンド推進センターの菊池三郎理事長だ。菊池氏は京都大学で原子核工学を専攻後、動燃高速増殖炉開発本部の企画部長などを経て、動燃もんじゅ建設所の所長も務めた。

 動燃生え抜きのスポークスマンとしてメディアに露出してきたことから、“ミスタープルトニウム”とも言われる菊池氏。日本外国特派員協会で11月6日に行った記者会見で、菊池氏は「福島の事故を乗り越えて世界の最先端の原子力技術を供給していくべきだ」と主張した。

原子力研究バックエンド推進センターの菊池三郎理事長

福島の事故を乗り越えて世界の最先端の原子力技術を供給していくべき

菊池 私が原子力業界に入ったのは、オイルショック前なので、もうかれこれ50年間、“原子力ムラ”で過ごしています。

 なぜ日本が原子力に取り組むことになったのか、簡単に振り返ってみたいと思います。60年ほど前の話ですが、アイゼンハワー大統領が「平和のための原子力(Atoms for Peace)」を宣言されて、その時に日本は次世代エネルギーとして原子力に注目したわけです。

 その状況は今も変わっていないと思います。もちろん福島のアクシデント、震災があったという事実はありますが、日本がエネルギーを必要とする状況については何も変わっていないと思います。私は21世紀から22世紀に向けて、福島の事故を乗り越えて世界の最先端の原子力技術を供給していくべきという立場をとっています。

 日本が米国とフランスの技術を勉強しながら、ここまで原子力技術を磨いてきたというのは歴史的な事実だと思います。そして、30年前から日本は原子力の自主技術を開発する、つまり「海外に依存しない原子力技術を持とう」というのが原子力開発の国是となりました。日本にはほとんどウランがないので、ウランに頼らない原子力技術を開発しようということで、(高速増殖炉の)もんじゅや青森県六ヶ所村の再処理施設がその中心となりました。

 次画像は福井県の、日本海に面したところにあるもんじゅです。ちょうど国定公園の中にあります。

もんじゅ

 ここで言いたいのは、ウランだけを使っていると原子力は100年単位のエネルギーでしかないということです。それならば、「たかが100年単位のエネルギーに、これだけの労力を費やすのか」となるわけです。

 しかし、いわゆる再処理プロセスを行ってリサイクルすれば※、何千年単位のエネルギーになります。30〜40倍のエネルギーになるので、数世紀分のエネルギーを供給できる可能性を秘めているわけです。

※いわゆる核燃料サイクル。使用済み核燃料からウランやプルトニウムを取り出して、再利用する。

 原子力発電をやろうとしている国々では、この状況を理解している人がほとんどです。ウランが潤沢に供給できるので短期的に「しばらく延ばそう」ということはありますが、その最大の原子力発電国の米国でさえ、学者や政策当事者は「ここ数十年のうちには必要になるだろう」とは理解しています。マスコミからは「(もんじゅは)年間約200億円を使うので無駄だ」という声がよくあるのですが、将来のことを考えれば極めて安い投資だろうと私は思っています。

 また、(高速増殖炉は)現在の軽水炉より比較的、環境への負荷が小さくなります。

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