敬老会補助に銭湯無料券……千葉市が行ってきたバラマキ事業最年少政令市長が経験した地方政治改革(2)(2/3 ページ)

» 2012年11月22日 08時00分 公開
[堀内彰宏,Business Media 誠]

市民が議会に関心を持つように

熊谷 人件費の削減では、私が就任した時、財政破たん寸前の自治体ということで、私を含めた特別職の給与を大幅にカットしました。名古屋市長の河村たかしさんが異常なことをやっているのですが、河村さんを除けば私が政令市で一番安いです。給料が安いというのは本来私は良くないと思うのですが、非常に削りまくった予算を市民に提示する以上、まず自分を切るということです。

 これも議会は切らしてくれなかったですね。「給与を削ります」と言ったら、「給与をカットする理由がよく分からない」「危なくないのに何でカットするんだ」と。私は「期末手当を半分カットします」「月額給与を2割カットします」と言ったのですが、「算出根拠が分からない」と言われました。「根拠と言ったって、明確に持っているわけではなくて、こんなもんでしょ」という話をしたのですが、財政再建の道のりを含めて、すべての全体像が見えない限り、そんなパフォーマンスはさせないということで、2009年6月に市長に就任して最初の議会に提示したら、継続審議になってしまいました。

 すると市民のみなさんから「ふざけんな」と非難の電話が殺到して、そこで彼らは議会での対応が市民の関心を得ていることに初めて気付くわけですね。今まで無風状態でサロン的にやっていたのが、選挙を通して市民の関心が一気に高まってしまったわけです。今まで電話なんてしてこなかった人たちがガンガン電話をかけてきて、「市長がけしかけているんだろ」みたいに言われました。「そんなこと知りませんよ」とは言ったのですが。

 そういうことで次の9月議会で彼らは承認してくれましたが、その時も落としどころを彼らは探りたいわけですね。いろんなことを言って継続審議にしてしまったので、普通の理屈だと次に賛成する理由がないということで、しょうがないので普通は市長は出ない常任委員会にわざわざ行って、「説明不足のところもございました」と若干わびを入れると、「よしよし」みたいな感じで決まりました。

 その後、職員給与をカットしました。最大9%ということで、政令市でも最大規模です。それから政令市で唯一ですが、退職金のカットまで実施しています。これも職員組合とは、大分ごねました。我々は橋下徹大阪市長とは違って、組合を悪者にしても後々ダメージが残るので、そういうことは極力せずにまとまれるんだったらまとまりたいということでした。ダメだったら全面戦争ですが。

 最大9%ダウンの提示をした時、当然彼らは反発をしたわけですが、交渉時期を異例なくらい長引かせて、予算の骨格を見せました。すると彼らは納得しました。後ほど説明しますが、高齢者を中心に予算カットの嵐でしたから、こんな予算を通したら、自分たちの給料も削っていないととても耐えられないということが、少なくとも幹部には分かるわけです。ですので、組合幹部はやむなしということで、相当突き上げを食らったみたいですが組合幹部も了解した中での大幅カットが実現しました。

 職員は3年間で200人以上削減しています。もちろんこれは仕事を減らした上での削減ですが、そういうことで人件費は私が就任する前と最新の予算では年間75億円ほど差が出ています。3年間の累計額で164億円削減しています。

 外郭団体の統廃合ではよく特殊法人が取りざたされますが、千葉市くらいの規模になると30くらいの外郭団体があるんですね。その中には必要な外郭団体も当然、いくつもあります。

 しかし、時代が変わって民間でできるものも外郭団体がやっているケースがあるので見直さないといけません。そして、すごく小さな単位の外郭団体もあるのですが、総務などの共通コストがどうしても高くなってしまうので、似たような業種は統廃合していこうということで、2つを解散させて、1つを統合、1つを事実上の休眠状態にしました。これは人がからむ話なので、ドラスティックすぎると後でよくないので、タイミングを見て、ひとつひとつ統廃合していく予定です。

 それから、その中で役員と職員の削減を進めています。市も偉い人たちの行き先を作らないといけないので、20人ほどしか職員がいないのに、役員が5〜7人いるような外郭団体があるんですね。非常勤の役員が9人もいたのですが、よほどのことがない限りいらないので、3人まで絞りました。常勤の役員は41人から32人に減りました。

 最近は局長などを務めて辞めても、外郭団体に天下らない人が増えてきました。それはおいしくないからです。給料も大分削りましたし、「統廃合がお前の仕事だ」みたいな感じで、行政改革の先遣部隊として送りこまれるので、そこの職員から嫌われるわけです。天下りする人たちはそんなつもりではないわけです。残りの2〜3年を市役所とのパイプ役を務めながら、それなりにやっていきたいという考え方の人たちなので、ちょっと仕事が割に合わないわけです。ですから、最近は「結構です」という人も増えてきました。

 外郭団体のトップでも、外部の人材が活躍できそうなものについては、民間から公募した人材を送り込むようにしていて、千葉都市モノレールは2010年から外部のコンサルタントに社長に就任していただいて、一生懸命頑張ってもらっています。今年度は産業振興財団というベンチャー支援をしたり、市内の企業のサポートをしたりする財団について、外部の金融などを経験した人に就任していただいています。

千葉都市モノレール公式Webサイト

 内部事務の見直しということでは「仕事ダイエット2010」というのをやっていますが、行政はなかなか仕事を減らせないんですね。前例踏襲が基本なので、仕事をなくすとなると、説明する人たちが多くなるわけです。

 例えば刊行物、千葉市○○年鑑みたいなものを作っていたとすると、それを必要としている人はゼロではないんですよね。それをやめるとなると、その人たちから言われてしまう。議会からも「何でやめるんだ」と言われてしまう。「説明するくらいだったら淡々と作り続けた方がまだ楽だ」という考え方がどうしても出てしまいます。

 行政はコスト意識や収益を考えにくい、もしくは考えなくていいとなってしまっているので、仕事を減らしても何のメリットもないわけです。ただ怒られるだけで何のメリットもないので、減らすインセンティブがあまりないんです。ですから、どんどん増えてしまうわけです。仕事を増やすとほめられるし、「市民目線だ」みたいなことを言われてしまうケースもあるので、すごく増えるんです。

 ですから、全部ゼロベースで考えようということで、刊行物や報告、会議など、前例でやっていた業務を切っていきました。また、無意味に時間外勤務をやる人たちにも帰っていただこうということもやりました。

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