2009年に現役の市長では当時全国最年少、政令市長としては史上最年少の31歳で千葉市長に当選した熊谷俊人氏。それまでの60年間、副市長(=助役)出身の市長が続いた千葉市は役所体質がまん延し、累積債務が危機的な水準となっていた。
就任直後に脱・財政危機宣言を発した熊谷氏。人件費削減、外郭団体の統廃合、事業仕分けなどの歳出削減を行うとともに、市税徴収率増加、資産経営やサービスの適度な有料化と歳入確保を打ち出し、ようやく財務指標に好転が見られるようになった。この3年間の取り組みについて熊谷氏自らが振り返った講演の内容を、4回に分けてお伝えする。
→第1回:「なぜ千葉市で政令市最悪の財政が生み出されたのか」
→第2回:「敬老会補助に銭湯無料券……千葉市が行ってきたバラマキ事業」
熊谷 歳入を増やす方法ですが、千葉市は根幹たる市税を一番徴収できていない市です。次図が政令市の徴収率ですが、一番下の異常に低いのが千葉市です。よく官僚出身の市長はノウハウを持っていると言われるのですが、そんなことはないと思います。88%くらいからスタートしていますが、千葉市は法律では定められていない手法で収納率を粉飾していたんですね。
税金をとるのをあきらめるには、いろんな理由があります。何年かけてアタックしてもダメでということで、市税をとらないというのは市民の義務をやらなくていいということですから、相当ハードルが高いわけです。しかし、千葉市は認められていない基準を勝手に作って、未納者をバンバン切っていたんです。
千葉県政界のドンと言われているような県議で、現職市長の有力後援者として選挙を仕切っていた人の税金を1億円以上不正に免除していた事件が明らかになって、これは逮捕されました。県議も税を不正に免除した当時の課長も逮捕されるという、千葉の闇を象徴するような事件があったわけです(→参照記事)。
最初はその有力県議の不正免除事件からスタートして、外部監査が入ったらこれだけではなくて、93%くらいの徴収率と言っていたのが、いろいろ調べて不正に免除していたのを入れると88%まで落ちてしまったわけです。こういうことが本家本元の自治省から来た人間のおひざ元で行われていたわけです。
徴収率が90数%以上の市は「よく頑張っていますね」ということで、地方交付税などが若干うわ増しされます。それまで不正にもらっていたので、総務省から「利子を付けて返せ」と言われて本当にひどい話でした。官僚出身の人間がトップをやってもこうなるわけです。
こういうことがあったために、今は職員も反省して、一生懸命頑張っていこうということで徴収率を上げてきています。市長が私になってからも債権管理条例などを作って、一生懸命やっています。
徴収を強化すればするほど、市長室にいろんな人が来るんです。どこかで出会ったような人たちが来て「市長、俺だよ俺!」みたいに言って、「あなたも滞納していたんですか」みたいな。「市長、どうしましょうか」と言われるのですが、「関係ないよ。容赦なく徴収しちゃえばいいんだよ。税を納めない人間は友達じゃない」と返しています。
こういう基本をやらないと、真面目に払った人の税金がその分だけ多めに使われることになるので、真面目にやっている人がバカを見るわけですよ。ですから、我々は「絶対に認めない」ということで、当然のことだと思います。もちろん、税を納められない人には分割納付などの手段も用意しているのですが、こうした人はそういうことがあろうとなかろうと守らない人々です。我々は容赦なく会社まで行って、給与を差し押さえます。これは当たり前のことですが、今までそういうことを千葉市はやっていなかったんです。
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