その「痛み」どうしていますか? “我慢は美徳”という日本人(4/5 ページ)

» 2012年11月29日 07時00分 公開
[Business Media 誠]

 「侵害刺激」は、ケガや火傷、打撲などのさまざまな原因によって発生するもので、例えばハリを指に刺し、ズキッとした痛みを感じるというプロセスでは、侵害物がハリであり、ハリが刺さった刺激が「侵害刺激」ということになる。その刺激は、身体にある「侵害受容器」が感知して、刺激は電気信号に変換され、神経を通って脳へと伝達されると、痛みが感知されることになる。逆に言えば、痛みの信号が脳に伝わらなければ、「侵害刺激」があったとしても本人が痛みを感じることはない。

 「侵害受容性疼痛」は、身体を傷つけるトゲや皮膚に炎症を起こす樹液など、身体への明らかな「害」が存在するため、おおむね「生命活動に必要な痛み」と言える。しかし2番目の「神経障害性疼痛」は、上記の「生命活動には必要でない痛み」に相当する。実のところ、神経障害性疼痛がどのようにして発生するのかは、まだ十分に解明されていない。その名の通り、神経系の何らかの障害により、脊髄にある脊髄後角という部分が過敏になることが、痛み発生に大きな役割を果たしているのではないか、と言われている。

 神経障害性疼痛は、侵害受容性疼痛のように外界の異物による刺激がなくても起こるのが特徴で、具体的には、三叉神経の圧迫が原因で顔に激しい痛みが出る三叉神経痛、糖尿病により高血糖が続くことで末梢神経が障害され、手足にしびれや痛みが出る糖尿病神経障害、脊柱管狭窄や、腰椎椎間板ヘルニアによって神経の根元が圧迫されることが原因で腰や足に痛みやしびれが出る坐骨神経痛などがある。頸椎で神経の根元が圧迫され腕や手にしびれや痛みが出る場合も、神経障害性疼痛だ。

 そして現在、慢性的な痛みを持つ人の24.1%、およそ4人に1人は神経障害性疼痛の疑いがあると言われている。これは20歳から69歳までの人口の6.4%にあたる。日本大学麻酔科の小川節郎教授らの調査では、神経障害性疼痛の患者84%が日常生活に何らかの制約があると回答しており、しかも最も制約を感じるのは「デスクワークなど、長時間座ったままでいるのが辛い」「スポーツが思いっきり楽しめない」など、仕事や余暇という若い世代、働き盛りの世代には一番「イタい」領域だ。まさに20〜30代には非常にやっかいな「痛み」と言える。

痛みによって最も制約を感じるのは「デスクワークなど、長時間座ったままでいること」

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