もうひとつの福島――「只見線」を忘れてはいけない杉山淳一の時事日想(4/5 ページ)

» 2012年12月28日 08時01分 公開
[杉山淳一,Business Media 誠]

金山町は住民世帯9割の署名を集めた

 地元自治体はどう考えているのだろう。今度は金山町の話を聞いた。JR東日本の言うとおり、残骸の撤去作業は進められているという。ただし、ここから先はJR東日本の調査を待たないと対応のしようがないそうだ。金山町は只見線復旧を願う住民から署名を集めて(世帯数の9割以上の署名が集まった)、JR東日本や行政機関へ請願した。

 ちょっと意地悪な質問もしてみた。ずっとバスでは駄目なのか。どうして鉄道が必要なのか。答えはシンプルだった。同町は主要交通手段が国道と鉄道の1本ずつしかない。国道252号は只見町内の峠付近が冬季通行止めになるため、新潟方面へは鉄道しか使えない。只見線の廃止が検討された時から、道路事情は変わっていないのだ。

 また、公共交通期間も只見線を除くと「地域内の町営バス」と「山間の昭和村行きの会津バス」があるだけ。隣の只見町や猪苗代方面などへ鉄道を代替するバス路線がないという。これでは観光誘致もままならない。金山町には登山、温泉、渓流釣り、スキー場などがある。冬期間道路が閉鎖されるなら、スキー場も鉄道利用客に頼ることだろう。

 町の予算で復旧といっても、金山町の被害は鉄道だけではない。住民や護岸、土砂災害の復旧もまだ進行中だという。今回は鉄道の被害だった。次は道路かもしれない。現在は交通が二重化されていないから、同じ水害が起こったら孤立してしまう。

JR只見線第7鉄橋・大塩地区(豪雨災害前、出典:金山町)
JR只見線第7鉄橋・大塩地区(豪雨災害後、出典:金山町)

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