「子どもの就活に口を出すモンスターペアレント」は本当にいるのかサカタカツミ「就活・転職のフシギ発見!」(1/3 ページ)

» 2013年01月21日 09時55分 公開
[サカタカツミ,Business Media 誠]

連載「就活・転職のフシギ発見!」とは?

 就活や転職、若年層を中心としたキャリアについて、仕事柄仕方なく詳しくなったサカタカツミが、その現場で起きている「当事者たちが気付いていないフシギ」について、誰にでもスルッと理解できるように解説するコラム。

 使えない部下が毎年出現するのはなぜなのか? その理由も、垣間見えるはずです。

著者プロフィール:サカタカツミ

 クリエイティブディレクター。1967年生まれ。長年、就職や転職、キャリアに関するサービスのプロデュースやブレーンを務めている関係で、就活や転職には詳しい。直近でプロデュースしたサイトは「CodeIQ」。著書に『こんなことは誰でも知っている! 会社のオキテ』『就職のオキテ』がある。

 個人的に書いている就活生向けのブログは、なぜか採用担当者たちから「読んでいて心が痛くなります。ホントに辛いです」という評価を受けている。Twitterアカウントは@KatsumiSakata


 「サカタさん、ご無沙汰してます。今度、カレーでも食べながらミーティングをしませんか? 私の大好きなカレー屋さんが、期間限定でカレーの食べ放題をやるそうなんで、そこにしましょうか。私、最近ちょっとショックなことがあったんですよ。やけ酒ならぬ『やけカレー』ですね!」

 先日、編集長の吉岡綾乃さんからこんなメールが届きました。この人、以前からカレー好きと公言しているのですが、まだカレーが食べたいのか、しかも、浴びるほど食べたいということか? となんとも複雑な気持ちになりながら、その極端さから最近の就活周りのニュースの「作られた極端さ」を、思い浮かべていたのです。

(写真と本文は関係ありません)

「就活に介入するモンスターペアレント」はどこにいる?

 「就活も親が参加する時代になった」というニュースを見かけることが増えてきました。その多くは、親御さんたちの過剰な就活への介入が、面白おかしく描かれています。例えば「会社説明会に親が同伴してきている」とか「どうして選考に落ちたのか、その理由を親が会社に電話してくる」とか、そういう感じの話をネットなどで見かけたという人も少なくないでしょう。

 しかし採用の現場にいて、そういう話を耳にしたことはほとんどありません。企業の採用担当者たちに「会社説明会に親御さんが来ているのを見たことがある?」と質問しても「いや〜、一度見てみたいと思っているのですが、ないですね」という答えばかり。就活生たちに聞いても目撃談は得られません。

 “就活に介入する親御さん”が実在しない、とは思いませんが、イマドキの就活生の親はみんな就活に過剰に介入して、親バカぶりを発揮している人ばかりというわけではなさそうです。同様のことは親だけでなく、就活生にも起きています。例えば「履歴書にプリクラの写真を貼っている」とか「敬語が使えないどころか、面接でタメ口をきく」とか、就活生のダメさ加減を揶揄(やゆ)する話も、巷にはたくさん流れています。そういう話には必ず「だからゆとり世代はダメだ」というフレーズがセットになっているのが特徴です。もはやパターン化してしまっていて、冒頭を読んだだけである程度オチが推測できる気がします。ただ、そういう学生がたくさん存在するのか、というと、実際にはほとんどいないのが現実です。

 ただ、1人でもいると目立つこと、そして、そういう話でないとニュースやコラムとして取り上げる価値がないことから、皆さんの目に触れる場所にたくさん流れ出すことになるのです。最近、内定辞退者に対する企業の横暴な対応がネットを中心として流れていましたが、これにしても「昔からある伝説的な対応」ばかりで、新卒採用に長く関わっている人たちにしてみれば「あれ、この話っていまさら?」とか「もし、未だにこういうことをしているのなら、この企業は馬鹿だな」という感じのことばかり。内定を辞退したからといって、頭からカレーライスをかけて、クリーニング代を渡す採用担当者がいたとしたら、このご時世ですから訴えられても文句は言えないでしょう。そして、そんなリスクを冒す社会人はほとんどいない、と考えるのが普通です。が、実際には「採用担当者たち横暴すぎる」とレッテルを貼られ、情報として流通しているのです。

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