コラム
» 2013年02月01日 08時02分 公開

杉山淳一の時事日想:快速電車が消える――そこに鉄道会社の“野望”が見えてきた (4/6)

[杉山淳一,Business Media 誠]

 この路線はかつて、朝ラッシュ時に急行を運転していた。二子玉川から地下に入ると、三軒茶屋駅以外は通過し、桜新町駅で各駅停車を追い越した。この速達運転は東急にとって大きな意味があった。長距離乗車する乗客へのサービス向上はもちろんだが、沿線の土地の価値を上げるために「渋谷まで急行で◯◯分」の「◯◯」を小さく見せる必要があったからだ。住宅地開発上のライバルは、「新宿まで◯◯分」「池袋まで◯◯分」という、他の大手私鉄沿線にあった。

 しかし、この作戦が成功し土地が売れて、沿線に乗客が増えると今度は急行が悩みのタネになってしまった。誰もが急行に乗りたがり大混雑となり、各駅停車と急行の乗換駅では乗降時間が延びまくった。私もかつてこの沿線から通勤しており、溝の口駅に急行が着くと、乗降時間が長いため、追い越したはずの各駅停車が追いついてしまい、ホームの隣の線路に到着していた。

 急行が速すぎて先行する各駅停車に追いつくなら理解できるけれど、急行が遅すぎて各駅停車に追いつかれる。冗談にもならない状況だった。当時も各駅停車と急行の到達時間の差は数分だったと思う。しかし、やはりラッシュ時の乗客は急行に乗りたがる。早く走るための急行が、運行遅延の原因になってしまった。

 そこで東急はついに英断を下す。2007年にラッシュ時間帯の地下区間の急行運転をやめて、地上のみ急行運転する「準急」とした。「渋谷まで◯◯分」のプライドを捨てて取り組んだ。結果としてこれは大きな効果を生んだ。運行遅延は減り、大井町線などバイパス路線の整備効果もあって、当時198%だった混雑率は2011年に181%まで下がった。

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