雪は降らなかったけど、JR東日本が間引き運転を決めた理由杉山淳一の時事日想(2/6 ページ)

» 2013年02月15日 08時01分 公開
[杉山淳一,Business Media 誠]

問題は主要通勤路線

 問題は主要通勤路線だ。始発から正午までの長時間にわたって3割の削減となった。対象は山手線・京浜東北根岸線・埼京線・中央線快速・中央線総武線各駅停車・総武快速線・南武線・横浜線・東海道線・横須賀線・東北本線(宇都宮線)・高崎線・常磐線快速・武蔵野線。これはやり過ぎだと思う。

JR東日本が減便した区間。赤が3割削減、茶色は5割削減、オレンジは1割削減

 ただでさえ飽和状態に近い通勤路線で、運転本数が平時の7割になったらどうなるか。誰もが予想できることだ。しかも雪の予報でマイカー通勤をやめ、電車やバスに乗り換えた人もいる。それは雨の日の乗客増からも予想がつく。つまり、普段より乗客が多いと予想できたのに、普段より列車は少なかった。

 確かに気象庁は前日の夕方までに都心部で最大10センチメートルの積雪予報を出し警告している。だから、その時点でこの処置は正しい。しかし、当日未明には東京近郊の気温の高さと積雪なし、あるいは軽微という状態が判明していた。JR東日本は各駅に職員を配置しているし、雪に備えて線路設備の保守要員も待機していただろう。だから「自分たちの目」でも雪の少なさは確認できたはずだ。

 そして気象庁は早朝に積雪量を5センチメートルに下げている。気象庁の定時発表は5時、11時、17時だから「早朝」は午前5時だ。積雪5センチメートルなら通常運行は可能。それにもかかわらず、JR東日本は減便を撤回しなかった。JR東日本の通勤路線は4時台に始発が出る。5時の発表では遅かったとも言える。大手私鉄がずっと「明日は平常通り」とした理由は、大手私鉄の始発がだいたい午前5時だから。気象庁発表のタイミングで臨機応変に対応できるという判断かもしれない。

 気象庁の予報が外れたと立腹する向きもあるだろうけれど、気象庁は刻々と変わる状況を報告し、予報を変更している。もっと細かいタイミングが望ましいけれど、しょせんは「予報」である。100%ではないし、当たり外れは誰もが承知。問題はむしろ、最悪の事態を予測したまま、それが回避されても対応できなかったJR東日本にある。これは明らかにオペレーションのミスだ。安全のための予防処置という言い分は分かるが、判断のタイミングを間違った。

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