雪は降らなかったけど、JR東日本が間引き運転を決めた理由杉山淳一の時事日想(4/6 ページ)

» 2013年02月15日 08時01分 公開
[杉山淳一,Business Media 誠]

 いまや列車ダイヤや運行管理はコンピュータ化されている。これはダイヤ作成の効率をかなり向上させた。しかし、それはダイヤ改正や臨時列車の設定など、事前の準備についてだけで、大規模な運行支障への対応力は低いのではないか。

 それを予測させる事件が過去に起きている。2011年1月17日午前8時過ぎ。東北・上越・山形・秋田・長野新幹線の全列車が1時間以上停止するトラブルが起きた(関連記事)。原因は運行管理システムのダウンだった。ある列車にトラブルが発生し遅延が発生。その回復のための列車ダイヤ修正作業で、データ入力数が600件以上になり、システムの限界を越えた。

 首都圏の通勤電車は新幹線よりはるかに運行本数が多い。いったん減便を確定させたダイヤに対して、運行本数を増やすとなれば、ダイヤの巻き戻しではなく、膨大な新規列車の設定作業になる。これにシステムが耐えられない、と判断したのではないか。

 しかも、減便した列車は混乱で遅れていたはず。当日は秋葉原駅で人身事故が発生し、山手線と京浜東北線がストップするというアクシデントも発生した。新規列車をダイヤに「挿入」するタイミングを把握しにくかったかもしれない。

 むしろ、このシステムの脆弱性(ぜいじゃくせい)ゆえに、早々に減便ダイヤを確定したとも言える。平常通りに列車を運行し、積雪影響でダイヤが乱れた場合、やはり膨大なダイヤ修正作業が必要になる。運行管理システムはそれに耐えられるだろうか。そこに不安があって、「あらかじめ減便し、列車の遅れを吸収できるダイヤで運行しよう」と判断したかもしれない。「ダイヤができても、運転士など人員の手配ができない」という原因もあるかもしれない。しかし、はじめから通常運転の要員を待機させておけば、すぐに復旧できたはずだ。

過密ダイヤは乱れると後を引く

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