「黄砂じゃなくて煙霧でした」報道の正しい読み方窪田順生の時事日想(2/4 ページ)

» 2013年03月12日 08時01分 公開
[窪田順生,Business Media 誠]

群馬が大変なことに

 まず、「煙霧」の正体である「砂ぼこり」が発生したという「関東地方内陸部」に目を向ける。

 天気予報なんかでこの言葉が出ると、だいたい埼玉、群馬、栃木という内陸県のことを指す。じゃあこの日、強い風が吹いていたのはどこのだろう、と探してみると、群馬がえらいことになっていた。

 10日の昼から県内では強風が吹き荒れ、館林では最大瞬間風速25.4メートル、前橋でも風速24.8メートルが記録されている。ケガ人も出て、両毛線が運休したりとかなりの被害が出た、と『毎日新聞』の地方版が報じており、こんな一文もあった。

 舞い上がったほこりなどで視界が極端に悪くなる「煙霧」が発生し、前橋市内では正午に視界が約8キロと最も悪くなった。

 東京で「煙霧」が確認されたのは午後1時半ごろ。この前橋の「煙霧」がおよそ1時間半をかけて南下し、気象庁が言うように「東京都心などに到達した」と考えられる。

 というのも、前橋気象台のデータを見ると、この日は昼からハンパじゃないほどの強い北風が吹いているからだ。

 午前11時に「東」から風速1.8メートルだったのが、12時になると「北北西」から風速10メートルと急に強くなり、13時には11.7メートル。ちなみにこの日の最大風速24.8メートルを記録したのは12時34分。「北」からの風だった。

 話をまとめよう。12時ごろから群馬では強風が吹き荒れて、畑の砂ぼこりが舞い上がって「煙霧」が発生。その北風にのって「煙霧」も南下した。風速10メートルで動いたとしたら1時間半で108キロ。前橋は東京から100キロ圏内と言われるので、確かに計算は合う。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.