土肥:話を聞いていると、なぜ米国でできて、日本ではできないのか、という気持ちになりますね。日本でできない理由は「お金がないから」「お役所仕事だから」という言葉だけでかたずけられるかもしれませんが、根底に「いい薬をつくろう。そして国民には健康になってもらって、長生きしてもらおう」という気概が足りない、そんな気もしますね。
窪田:その通りだと思います。FDAは安全性を担保したうえで、「いい薬を出していこう!」という姿勢がうかがえますね。しかも「考えながら動いている」。だからスピーディーなんですよ。
土肥:日本の機関を皮肉れば「考えながら動かない」ということになりますかね。頭のいい人たちが集まっているので、まさか「考えていない」ことはないと思いますが……。ま、批判はこのくらいにします。
あと、やはり米国にはベンチャー起業を受け入れる、文化のようなものがあるのでしょうか。
窪田:それはものすごくありますね。ハーバード・ビジネス・スクールの卒業生をみると、トップの3分の1は自分で起業して、次の3分の1は起業したところに参加して、次の3分の1は大企業に就職すると言われています。そうした文化があるので、会社を立ち上げても優秀な人材が集まりやすい。こうしたことはものすごくありがたいことですね。
一方、東京大学を卒業した学生が「起業したい」「ベンチャー企業で働きたい」と言ったら、その親の多くは反対するでしょう。また自分の親を悲しませてまで、ベンチャー企業で働く人も少ない。優秀な人材の多くは、明日潰れるかもしれない会社で働くのではなく、大企業で働く傾向がありますよね。
あと、創業当時は自宅の地下室にオフィスを構えていたので、スペースが狭かった。会議をするときには、いつも近所にあるスターバックスを“会議室”として利用していました。4〜5人が長時間議論していても、お店の人は嫌な顔をしないんですね。それどころか、「自分たちの会社は新薬を開発している」といったことを話すと、コーヒーをタダにしてくれました。
また会社を設立する際、自己資金があまりありませんでした。事務手続きにお金がかかるので、「このままでは創業できないかも」と思ったときに、ある弁護士が「お金はいらない」と言ってくれました。
土肥:いわゆる“出世払い”というやつですか?
窪田:ですね。まだ実績を何ひとつ残していない私たちを、応援してくれる人たちがいる。しかも近くにいる。“ベンチャーを支援しよう”という環境は、ものすごく心強かったですね。
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