家電メーカーが期待する主力商品――「4Kテレビ」の“寿命”相場英雄の時事日想(1/3 ページ)

» 2013年04月18日 08時00分 公開
[相場英雄,Business Media 誠]

相場英雄(あいば・ひでお)氏のプロフィール

1967年新潟県生まれ。1989年時事通信社入社、経済速報メディアの編集に携わったあと、1995年から日銀金融記者クラブで外為、金利、デリバティブ問題などを担当。その後兜記者クラブで外資系金融機関、株式市況を担当。2005年、『デフォルト(債務不履行)』(角川文庫)で第2回ダイヤモンド経済小説大賞を受賞、作家デビュー。2006年末に同社退社、執筆活動に。著書に『震える牛』(小学館)、『偽計 みちのく麺食い記者・宮沢賢一郎』(双葉社)、『鋼の綻び』(徳間書店)、『血の轍』(幻冬舎)などのほか、漫画原作『フラグマン』(小学館ビッグコミックオリジナル増刊)連載。ブログ:「相場英雄の酩酊日記」、Twitterアカウント:@aibahideo


 先の当欄で、日本の家電メーカーが今後の主力商品として注力している商品に疑問符をつけた。急激に国際的なシェアを落とした日本製の薄型テレビだが、日本勢は高精細・高付加価値の新機種を相次いで開発、市場に投入し起死回生を図ってきた。だが、早くもこうした戦略に暗雲が垂れ込め始めているのだ。暗雲を読み解くキーワードは「コモディティ化」(商品の差別化が失われ、安さを理由に選択されること)だ。

早ければ2年程度で低価格品登場

 冒頭でも触れたが、私は当欄で日本の家電メーカーが新戦略商品として市場に投入した4Kテレビの先行きを不安視する記事を寄せた(関連記事)

 薄型テレビの代表格である液晶パネルは国際的な値下がりが続き、日本メーカーはここ数年で国際的なシェアを急激に落とした。足元の2〜3年は日本勢のシェアを合計しても、韓国の2大メーカーの足元にも及ばない状態となり、日本の各社は昨年から経営戦略の見直しを迫られたのは記憶に新しい。

 ネットで、シャープやパナソニックという社名にリストラという文言を加えて検索すれば、関連記事が山のようにヒットするので参照されたい。

 そこで、起死回生の主役としてメディアに露出したのが4Kテレビだ。現状のフルハイビジョンの4倍の解像度を誇る高精細画面がウリだ。従前の主要メディア記事をチェックしてみると、「日本メーカーが得意な精緻な技術が結集している」「新興国メーカーにはマネのできない技術」などの美辞麗句が並んだ。

 もちろん、高精細という特別な武器が備わっているだけに値段も高い。液晶テレビの価格急落で苦しんできた日本メーカーにとって、「世界中の富裕層が購入することで収益環境が好転する」(銀行系証券アナリスト)という救世主的な位置付けが生まれ、産業界はもとより、これを報じるメディアでも主流だったのだ。

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