この調査は、2010年6月から施行されている「育児・介護休業法」を改正するときの参考資料集に収められており、誰でも見ることができます。2005年の調査で第一子出産前後の女性の継続就業率が38パーセントで、それを引き上げたいと考えるが、出産後の継続就業は難しいということを示す根拠になっているデータです。約26パーセントの人が「仕事を続けたかったが、仕事と育児の両立の難しさでやめた」と回答していて、その理由も掲載されています。しかし、そのデータの中で最も多かったのが「家事・育児に専念するため自発的にやめた」という理由で辞めた人だったのです(41パーセント)。
「子どもの出生年別、第1子出産前後の妻の就業経歴の構成」と「妊娠、出産前後に退職した理由」。1985〜89年と2000〜04年を比較すると、育休取得者は増えているものの、第一子を出産した後も継続就業している女性はさほど増えていないことが分かる(クリックすると全体を表示。出典:改正育児・介護休業法参考資料集)だから、今回は「3年間抱っこし放題」の仕組みを提案している。一見すると筋が通っています。改正育児・介護休業法では「継続就業が困難であるから」法を改正して、就業が継続できるように取り組んだわけですが、今回は「だったら、休んでもらって大丈夫なようにしよう」というアプローチに変わったということなのでしょう。それが正しいことなのかどうなのかを、この記事で議論するつもりはありません。問題は「どういう議論がなされて、どういうデータを根拠にして、どういう法律なり行動指針が示されたのか」を理解することに骨が折れるということなのです。
例えば「3年間抱っこし放題」なんて馬鹿げていると非難している人の中には、首相官邸のホームページに置かれているスピーチの原文を読んでいない人もいるでしょう。また、その根拠になっているデータを探して確認している人も多くはいないはずです。そして、そのデータがよりどころになり、法が改正されていて、しかも「就業継続支援策が用意されていた」ことも知らない人が多かったと思います。例えば「パパ・ママ育休プラス」という仕組みがあるということを知っていた、という人はどのくらいいるのでしょうか。
厚生労働省のホームページには、それらへの理解を促進するための印刷物が作られ、告知広報されていることが一目瞭然です。PDFデータも公開されていますから、その気になれば誰でも見ることができます。しかし、ほとんどの人は、そのパンフレットに「赤く太文字」で書かれていた「期間雇用者(パート、派遣、契約社員など雇用期間の定めのある労働者)でも、一定の要件を満たす場合は、育児休業をすることができます!!」ということを知らないでいるかもしれないと、心配になってしまいます。
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