ホンダはなぜ、F1復帰を決めたのか――社長会見を(ほぼ)全文収録(4/5 ページ)

» 2013年05月16日 19時33分 公開
[吉岡綾乃,Business Media 誠]

――今回参戦するにあたり、どれくらいのコストを見込んでいますか。また、どのようなレベルの結果を求めていますか? また今回、決めるまでの経緯を教えてください。

伊東 費用は……それは言えないですね(笑)。隠したいというのではなくて、言えるような内容でもないということで。まず、私たちが目指しているのは「勝つこと」です。レースは、1番になることに大きな意味がある。これはF1の活動でもほかのレースでもそうですが、ずっと味わってきた歴史、経験。それを考えると、レースは勝たなきゃいけない。今回はそれを相当強く意識しながら活動しなくてはいけないと思っていますね。あと、ここに至る経緯は、すんなりトントンと言ったわけではありませんでね。私があちこちで「勉強中」といったのは、本当に勉強している真っ最中だったのです。このタイミングでこういうすばらしい発表をできることを、本当にうれしく思っています。

――第三期の活動では、はっきり言って、エンジン供給に限っても迷走の連続だったと思うのです。どのように総括をして(参考記事)、どのような結論に達し、今回の参戦は前回とどこが違うのか。社長としてどのような覚悟で臨まれたのか。また、このような大きな案件なので取締役会にかけたと思いますが、取締役全員の賛成が得られましたか。

伊東 このような重要案件ですから、社内でも十分議論を尽くし、当然取締役会でも全員一致でこの事業に関しては承認をいただいています。第三期の総括はどうするかというと、いろいろな方がいらっしゃるので、社を代表してというのは難しいんですが、私の見解を言うと、F1の全体をマネージメントするというのは本当に大変なことだ、というのが私個人の感想です。私どもは、どちらかというとエンジンは得意である。しかしF1に勝つためには、最高のエンジン、そして素性の良いシャシー(車体)、それを運転するすばらしいドライバー、それを支えるすばらしいメカニック、全体をオーガナイズするすばらしい監督、これらすべてが、全部一流の最高状態で、すべて揃ったときでないと勝てない、と私は思っています。

 そういう意味で、前回参戦した第三期は、チャレンジという意味では最高のチャレンジでしたが、正直いうと、本当の実力という意味では……F1に挑戦し、車体を作り、チームをマネジメントするということでは、やはり我々はもっと学びたい、というか謙虚な姿勢でいなくてはならない、という気持ちでした。

 ただ、エンジン技術では負けることはない、とずっと自負を持ち続けています。そういう意味で言いますと、今回のマクラーレンとホンダというのはある意味理想、最高の組み方だと私は思っており、得意領域をお互い持ち合いながら、常に勝利を勝ち取っていくというのは、私の考える理想の推進形態だと思っているので、これは長く続けたいと思っています。

「Honda RA106」第三期、ホンダワークスチームとして参戦していたときのクルマ。2006年ハンガリーGPで、ジェンソン・バトン選手が優勝を果たした

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