トンネルだらけの沖縄新鉄道案は魅力に乏しい杉山淳一の時事日想(5/6 ページ)

» 2013年06月14日 08時00分 公開
[杉山淳一,Business Media 誠]

観光需要を低く見すぎていないか

 いますぐ始めれば、2033年に沖縄で鉄道の旅ができる。そう思って報告書を読んでみたら、かなり残念な部分があった。なんと、主な想定ルートは全区間の7割がトンネルである。那覇側は用地買収の困難から地下鉄となり、名護側は山岳のためトンネルとなる。せっかく那覇空港に降り立っても、鉄道に乗ったら景色が見えない。これなら観光客はバスを選びそうだ。

 沖縄県の鉄道計画には観光需要も織り込んでいる。ただし、その見積はかなり控えめだ。計画にあたって実施したパーソントリップ調査(人の移動に関する調査)や、新路線の性格によって、観光需要の掘り起こしには使えないという考えのようだ。その根拠として、他の都道府県の観光鉄道もよく調べている。その上で、「新しい鉄道には歴史的価値という観光資源性はない」「路線延長が短いため、食事を提供したり、行き先不明イベント列車の運行が難しい」という。

 さらに、需要予測を厳しく見積るために、観光需要予測は空港と宿泊地間の移動のみを対象としている。沖縄のリゾート施設はほとんど海沿いであり、沿岸区間が少ない鉄道計画では低い見積もりになるだろう。さらに、宿泊地と観光地、観光地と観光地間の周遊行動については対象外としている。全区間の7割がトンネルというプランは、観光輸送に期待しないという決意の現れともいえそうだ。

新鉄道案の南側は平野部で用地取得の困難が予想される。北側は山岳地帯の西側海岸を通る(Google Mapsにて制作)

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