いますぐ始めれば、2033年に沖縄で鉄道の旅ができる。そう思って報告書を読んでみたら、かなり残念な部分があった。なんと、主な想定ルートは全区間の7割がトンネルである。那覇側は用地買収の困難から地下鉄となり、名護側は山岳のためトンネルとなる。せっかく那覇空港に降り立っても、鉄道に乗ったら景色が見えない。これなら観光客はバスを選びそうだ。
沖縄県の鉄道計画には観光需要も織り込んでいる。ただし、その見積はかなり控えめだ。計画にあたって実施したパーソントリップ調査(人の移動に関する調査)や、新路線の性格によって、観光需要の掘り起こしには使えないという考えのようだ。その根拠として、他の都道府県の観光鉄道もよく調べている。その上で、「新しい鉄道には歴史的価値という観光資源性はない」「路線延長が短いため、食事を提供したり、行き先不明イベント列車の運行が難しい」という。
さらに、需要予測を厳しく見積るために、観光需要予測は空港と宿泊地間の移動のみを対象としている。沖縄のリゾート施設はほとんど海沿いであり、沿岸区間が少ない鉄道計画では低い見積もりになるだろう。さらに、宿泊地と観光地、観光地と観光地間の周遊行動については対象外としている。全区間の7割がトンネルというプランは、観光輸送に期待しないという決意の現れともいえそうだ。
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なぜ「必要悪」の踏切が存在するのか――ここにも本音と建前がCopyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
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