宮脇氏は富士スバルラインをタクシーに乗り、あたかも列車に乗っているような描写をする。そこが紀行作家の真骨頂である。ただし、この項で興味深いところは、植物学者を取材し、道路を鉄道に転換したメリットについて取材していることだ。読者はここで「富士山にとって排ガスはあまり問題ではない」という指摘に驚くだろう。富士山は独立峰であり、風が通るから排気ガスは吹き抜けてしまうという。しかし、マイカー利用者が高山植物を根こそぎ盗んでいくほうが問題だと指摘している。また、宮脇氏はタクシー運転手の証言として、「富士スバルラインが風の通り道となってしまい、風害で樹木を枯らせ、地下水の流れを変えてしまった」と著している。
宮脇氏が取材した1990年のデータによると、8月の通行車両数はバス乗用車合わせて20万6120万台。予測した人数は80万人超。お盆休みのピークは1日5万人が通行する勘定になるという。5万人を定員800人の列車で輸送するとすると、1日に62.5本を設定する必要がある。運行時間は6時から20時までの14時間とするなら、1時間あたり4.46本。12分間隔なら5本の運行ができるから、なんとか対応できそうだ。ただし定員800人で4両はキツイ。10両ならJR特急規格程度の座席数を設定できる。しかし、10両対応の鉄道設備は場所をとる。スバルラインの用地からはみ出すところも増えるだろう。富士急行の現行区間も大幅な改修が必要だ。
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