弘南鉄道の弘南線はなんとか黒字。しかし大鰐線の赤字が経営の足かせとなり、社員にボーナスはなく、昇給も止まったまま。これも社長の心労を増やす理由だ。こんな状態で自治体が「補助金を出すから存続させよ」とは残酷である。中央弘前駅の待合室はジュースの自販機がズラリと並び、売り上げはきっぷよりジュースのほうが多そうな雰囲気だ。経営改善もギリギリの弘南鉄道についてどうしたらいいか。
大鰐線の最盛期は約389万人の利用者がいて、それでも赤字だった。2012年度は約57万6000人とピーク時の2割以下になっている。弘南鉄道の鉄道事業は約1000万円の赤字とのこと。しかし、この数字は赤字ローカル鉄道としては優秀なほうだ。兵庫県の北条鉄道は約1640万円の赤字で、これでも「前年度に比べて減った」と喜んでいるくらいである。
公共交通を維持するために、約1000万円の補てんは許容範囲といえる。弘南鉄道の社長はそれを心苦しいと述べている。沿線自治体は「そんなことはない。弘南鉄道は地域に貢献している。十分な補てんをするから頑張ってほしい」と温かく支援の手を差し向けるべきかもしれない。
補てんの垂れ流しも良くない。通学輸送が主であれば、学校が集まる中央弘前駅から千年駅までを残し、千年から大鰐までは廃止するくらいの覚悟は必要かもしれない。路線が短くなれば必要な車両の数も減り、車両更新の負担はかなり軽減される。積極的な投資ができるなら、車両更新の機会にLRT(次世代型路面電車システム)車両を導入し、中央弘前駅とJR弘前駅を結ぶ路線を新設したい。沿線にパークアンドライド設備(自宅からクルマで駅まで行き、そこから電車を利用すること)を設置すれば、弘前市への通勤輸送を見込めるかもしれない。
もっとも、この区間は並行する弘南バスの便数が多く便利である。通学輸送、少子化という流れを見ると、残念ながら大鰐線の見通しは暗い。民間経営で限界となった公共交通をどのように存続させていくか。必要だと感じる者が運営すべきだろう。弘前市や大鰐町にそこまでの覚悟はあるだろうか。
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