「就活地獄」報道は本当か――就職氷河期と企業の採用満足度の関係性サカタカツミ「就活・転職のフシギ発見!」(2/3 ページ)

» 2013年08月19日 07時00分 公開
[サカタカツミ,Business Media 誠]

厳選採用は学生にとってはマイナス、では、企業にとっては?

 もう少しデータを見てみましょう。企業が厳選採用をしたとして、その学生に対して「満足しているのか」というデータです。以下の表がそれになります。

企業の内定者に対する満足度(出典:2013年卒マイナビ企業新卒内定状況調査)

 採用基準が極端に厳しくなった2010年卒の内定者に対して、その前年と比べて質・量ともに満足であるという数字が跳ね上がっているのが分かります。企業は厳選採用をして、人数を絞ったにもかかわらず(絞ったからこそ、なのかもしれませんが)質も量も満足したと評価しているのです。その後、採用基準が緩和されるとともに、満足度も目に見えて下がっていきます。

 このデータでもう一つ注目したいのは、直近2年(12年卒、13年卒)の満足度の変化です。「質は満足・量が不満」という数字が跳ね上がっているのに加え、「質・量ともに不満」という数字も大きくなっています。タマゴとニワトリの話になってしまうのかもしれませんが、「量が採れないので採用基準を緩和して量を確保しにいったけれども、結果として、採用が苦手な企業は量も質も下がってしまった」というケースが増えているということなのでしょう。これは企業側から見た話ですから、裏を返せば、学生は楽になっていることになります。このデータを見ても当然の結果だといえるでしょう。

 このデータでさらに注目したいのは、就職氷河期と企業の採用満足度の関係性です。直近2回の氷河期と言われている2000年卒と2010年卒の満足度を見てもらえば一目瞭然です。厳選採用をすることで、企業の満足度は質・量ともに極端に上がり、逆に不満の具合はグンと下がっています。就活生には酷な話かもしれませんが、狭き門になればなるほど、企業としては満足な新卒採用ができる、つまり「企業は厳選採用すべき」ということになりそうです。

「就活=学生生活すべてを犠牲にして取り組む」という時代は終わった?

 最近、就活生向けのサイトサービスを提供している人たちと立て続けに会って話をしたのですが、彼らが口を揃えて言うのは「学生のサイトへのアクセス傾向が変わってきた」ということです。

 かつては、就活と称される時期には休日だろうと夜中だろうとガンガンサイトへアクセスがあるという状況が普通でした。しかし最近は、土日のアクセスは極端に下がり、夏休みなどの長期休暇に入ればアクセスはさらに激減。つまり「世間が休みのときは、就活もお休みする」という就活生がスタンダードになってきているのかもしれません。

 同時に「リクルートスーツ姿の学生を見る時期が短くなってきた」という話もよく耳にします。皆さんもお気づきになっている人もいるかもしれません。「就活ナビサイトがオープンした」「合同説明会が開催された」というニュースが流れる時期には、街で就活生だと一目でわかるリクルートスーツの学生を目にする機会が多いと思いますが、その後あっという間に見なくなります。以前なら、暑い時期なのにスーツって大変だなと、思うことが多かったのですが、暑い時期にスーツ姿の就活生が少なくなっている。就活する期間も短くなっているのです。

 先ほどの企業の内定者への満足度を見ればよく分かるのですが、とにかく量が不足している。ということは、就活生にとってみれば、ほどほどに頑張れば内定は取れるわけですし、就活をする期間は短くても大丈夫という状況なのでしょう。もう一つ、下記のデータに注目してみましょう。

今年度の学生の特徴(出典:2014卒マイナビ企業新卒採用予定調査)

 これを見ると、イマドキの学生のイメージが端的につかめると思います。のんびりしていて、就活の開始時期が遅い。企業研究はイマイチだけど、礼儀正しいし、話もきちんと聞く。つまり、就活そのものに対してはあまり熱心に取り組んでいるという感じはしないけれども、人としてはけっこうちゃんとしているということが、ぼんやり見て取れるのではないでしょうか。

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