24時間体制でない成田空港は発着時間帯が限られ、遅延が積み重なれば便のキャンセルを生じかねないため、所有機をフル稼働させたいLCCとしては使い勝手が悪い。それなのに世界有数の高額な空港使用料を請求される、LCCにとって実に儲けにくい空港なのである。これは24時間稼働の関西空港をベースにするピーチが一番好調である理由にはなるが、同じ成田を拠点にして好成績を上げているジェットスター・ジャパンを前に、この言い分は通用しないだろう。
アナリストたちが挙げていたもう一つの要因は「エアアジア」ブランドが(東南アジアでは有名とはいえ)日本では浸透していなかったのではないかという点だ。これはジェットスター・ジャパン就航前からジェットスター本体が日本に就航していたのに比べ不利な点といえようが、ピーチがまったくゼロから始めて結果を出しているのだからやはり言い訳に過ぎない。実際、「バニラ・エア」にブランド変更することで、もう一度ゼロからのスタートをする覚悟を決めた同社にとっては、その要因は小さいと割り切ったはずだ。
それ以外に関係者が理由として挙げているのは、エアアジアCEOのトニー・フェルナンデス氏が指摘している「ANAのような伝統的な航空会社出身の人間がLCCの幹部にいることでの動きの悪さ」と、社内の人が指摘する「合弁企業ならではの意思決定のもたつき」である。
伝統型の航空会社の経営とLCC経営がまったく異なることも頷けるし、合弁会社の経営が難しいことは一般的にも認識されている(実は小生もその体験者である)。しかし好調のピーチ・アビエーションがANAと投資会社の合弁子会社で、ANA出身者が経営陣を占めること、ジェットスター・ジャパンもJALと三菱商事そしてカンタス航空の合弁である事実を考えれば、エアアジア・ジャパン不振の主因として単純には頷けない。
結局、エアアジア・ジャパンが「ダッチロール」したまま経営を立て直すことができなかった主因は環境的な条件や形式の問題ではなく、親会社間での主導権争いが生じ、互いに不信感を深め、経営の方向性で一致団結できないために効果的な手を打てなかったという「内部事情」に尽きるのではないか。その意味で、早めに「成田離婚」し、100%子会社として再出発することは間違いではないのかもしれない。(日沖博道)
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