TOEIC受験の第一人者に聞く――社会人にとってのTOEICの意義とは?ヒロ前田氏に聞くTOEIC対策(1/4 ページ)

» 2013年09月06日 08時00分 公開
[まつもとあつし,Business Media 誠]
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 グローバル対応の名のもとで英語の重要性が叫ばれる一方、採用に際してTOEICのスコアを参考にする企業が減少しているとも報じられている。大学受験にTOEICとは大きく異なるTOEFLを活用しようという方針も示されており、英語力を測る上でのTOEICの在り方があらためて問われている状況だ。そこで、長年TOEIC受験対策を手掛けてきたヒロ前田氏に、詳しく話を聞いた。

TOEICとTOEFLの違いとは?

まつもと まず、そもそもTOEICとはどんなテストで、どういう経緯で生まれたものなのでしょうか?

ヒロ前田氏。TOEICテスト指導者養成トレーナー/受験力UPトレーナー

前田 TOEIC=国際コミュニケーション英語能力テストの最大の特徴はビジネスパーソン向けに開発されたテストだという点です。テスト自体は、米国のETS(Educational Testing Service)という非営利団体が開発、運営を行っています。ただし、もともとは日本人がETSに作成を依頼して誕生しました。1979年がスタートの年です。

 つまり当時の時代背景、高度経済成長下にあって、海外に赴任した多くの日本人ビジネスパーソンが実際に出会うであろうシチュエーションに基づいて、問題は用意されています。オフィスで上司や同僚とやり取りしたり、空港で手続きしたり、現地のスーパーマーケットで買い物したり、といった場面が想定されているわけです。中高生が多く受験する英検との大きな違いでもありますね。

まつもと なるほど。2012年度には受験者数が過去最高(TOEICテストで230万4000人)を記録したことも発表されました。ここまでこのテストが広がった理由は?

前田 歴史は長いものの、TOEICがここまで注目されるようになったのは、実はここ10年くらいのことです。ビジネスパーソン向けであることに加えて、大きな要因は非常に実施しやすいテストであるということですね。マークシート方式で、面接やプレゼンが組み込まれている訳ではありませんので、会社や学校でも比較的手間を掛けずにテストを行うことができ、受験もしやすいという点が挙げられると思います。

TOEFLとTOEICの違い

まつもと 批判もありますが、安倍政権では、大学受験へのTOEFLの採用も提言されています。TOEFLとTOEICの違いについても教えてください。

前田 テストを開発している団体は同じ(ETS)です。しかし目的が全く異なります。TOEFLはアメリカに留学したいアメリカ国外の人を対象にしたテストなんです。従って登場する語彙(ごい)や想定している状況、そして問われる能力も異なります。

 TOEICはリーディングとリスニングのみをマークシート方式でテストしますが、TOEFLはコンピュータに入力するスタイル(iBT方式)で回答していき、スピーキングとライティングも加わった4技能が問われるのです。よって今お話ししたテストの実施のしやすさ、受験しやすさという意味でもハードルは高いと言えます。

 TOEFLには科学や歴史のような学術的な内容も多く出題されますから、大学受験に組み込むといったアイデアにもつながっているのでしょう。ただ、TOEFLでは英語を2分ほど読んだり聞いたりしてから、1分間口頭で回答するといった形式のテストがありますが、同じ事を果たして日本語でやったとしても「できません」という人が多いはずです。そういう訓練を受けていない人にとっては英語力以前の力がまず不足している、ということになってしまいますから。そこは大きな問題だと思いますね。

 そもそもTOEFLは大学に通いながら、留学を考えるようなレベルの高い学生が受験するテストですから、これから大学を受験しようという学生にすべからくこれを課しても、果たして適切にレベルを測る事ができるのかという疑問はわれわれの業界からも上がっていますね。

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