TOEIC受験の第一人者に聞く――社会人にとってのTOEICの意義とは?ヒロ前田氏に聞くTOEIC対策(2/4 ページ)

» 2013年09月06日 08時00分 公開
[まつもとあつし,Business Media 誠]
※本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています

TOEICのスコアはゴールではない

まつもと なるほど。Business Media 誠の読者に多いビジネスパーソンとしてTOEFLは意識しておく必要はあるのでしょうか?

前田 それはないと思います。ここまでお話ししてきたように目的が全く異なりますので。ただ、TOEICで十分だという風にも考えないほうが良いですね。自分自身がビジネスシーンで英語に何を求めるのか、また会社が自分にその領域で何を求めているのか、そのあたりをしっかりと見極める必要があります。特に会社が求めていることは、言語化されていないことも多いので注意しなければなりません。

 当然のことですが、会社が求めているのはTOEICで高い点を取る技能を身につけた人材ではなく、英語も活用しながら「仕事ができる人」を育てたいはずですから。この2つの人材像はイコールではありません。人事部はTOEICのスコアで人材とそれを育てる自分たち自身を評価しがちですが、経営者は本来そうではないはずですよね。

 TOEICは優れたテストですが、仕事で成果が出せるかどうかまでを測れるものではありません。例えば、1000人の社員のうち、100人を選抜して、次のトレーニングを受けさせるといった場面で有効だということです。実際そのように活用している企業も見受けられますね。理想的には「3年後に500人の前で英語で製品説明ができる人材を育てる」といったより具体的な目標が挙げられると良いと思いますが。

まつもと 実践的な英語力が問われるようになる中、TOEICで測られるリスニングとリーディングだけでは十分ではないという声もありますね。

前田 TOEICにもSW(スピーキング&ライティング)というテストが別途受けられるようになりましたが、年間受験者は1万人程度とまだあまり知られていません。受験する側、させる側にも必然的にこれを活用しようというモチベーションがまだ高まっていないのを感じます。スコアではなく英語の運用力を求めるのならば、必須のスキルであるにもかかわらず、です。SWテストはTOEFLと同様にコンピュータを使うテストです。つまりマークシートのように、塗りつぶせばある程度点が取れるわけではなく、本当の意味での実力が暴露されるわけです。

 言ってしまえば、測ろうとしている、伸ばそうとしているのは英語力ではなかったということかもしれません。実際、受験術を磨いてTOEICで高いスコアを取った人が、SWで惨敗してしまっては、本人だけでなく会社の人事部としても恐らく困ったことになってしまいますから(笑)。

まつもと クルマの運転にも似ているかもしれませんね。TOEICはペーパーテストで、SWは実技のようにも。そういう意味ではSWはいいテストだと思うのですが。

前田 テストそのものには良い/悪いはないんですよ。力を付けて伸ばすことが本質ですから。学習者の数が増えて客観的な評価が必要になったので、便宜上テストが生まれたにすぎないのですから。SWもTOEICだけでは測れない能力を知りたい、という企業側のニーズに応えたものであるはずですが、今のところは「その力は付いていない」という現実から目を背けようとしている状況ではないかなと思いますね。

ヒロ前田流TOEIC攻略法

まつもと TOEICを巡るさまざまな課題についてもよく分かりました。とはいえ、本記事の読者も受験する以上は良い点を取りたい、というのが本音でもあるはずです。TOEIC受験を長年指導されてきたご経験から、幾つかのコツを伺っていきたいと思います。

前田 まだTOEICを受験していないのであれば、とにかくまずは受けてみてください、というのがまず第1のアドバイスですね。「対策してから受験する」という方法はオススメしません。まずは敵を知ることです。TOEICはいつでも申し込みができますので、今日申し込める最初のテストに申し込んでしまってください(TOEIC申し込みサイト)。

まつもと 確かに、資格試験や大学受験などと違って低い点でも何か不利益があるわけではありませんからね。

前田 実際の試験の雰囲気も分かりますし、提出が求められている場合を除けば受けて損はないと思います。どうしても受験料がもったいないという人は、テスト制作機関が作っている問題集がありますので、それを使ってちゃんと時間を計ってやってみて自己採点してみるのもよいでしょう。

 先ほど申し上げたように、スコアそのものは本質ではありません。ただ、努力するための目標として目指すのであれば、自分の実力と求められるスコアとのギャップを知り、どこを攻略すれば良いのかという戦略を練っていく必要があるでしょう。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.