南場智子さんが語る、マッキンゼーの経験が役に立たなかった理由『不格好経営』の著者が伝えたいこと(前編)(4/4 ページ)

» 2013年09月27日 07時05分 公開
[土肥義則,Business Media 誠]
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現場から離れて気づいたこと

――南場さんは2011年に夫の看病に専念されるということで、会社の代表取締役社長を退任されました。少し離れたところからご覧になられて、改めて気づいたことはありますか?

南場:社長時代は、毎日カリカリしていました。いろんな心配事があったのですが、現場を離れてみると、穏やかな気持ちで会社を見ることができましたね。そのおかげで、中長期的に会社のことを考えられるようになりました。

 その一方で、周囲の人たちがDeNAを正しく理解していないことが分かってきました。会社が与える印象と実態にギャップがあるんですよね。会社の将来のことを考えると、そのギャップはなくしておいたほうがいい。社会の中で発展を望まれるような会社にならないと、発展し続けるのは難しくなる。そうした感じがしたので、いまは現場に戻って守安(社長)をサポートしながら、常勤の取締役という立場で気を配っています。

 あと、私は家族のことで社長を退任したわけですが、社員には会社で働き続けてほしいなと思っています。自分がこういう立場に置かれて、さまざまな事情によって仕事を優先できない人たちがいるんだなということを知りました。

 もちろん会社には産休や介護などの制度は完備していますが、どちらかというとそういうものを完備しなければいけないからとか、優秀な人に長く活躍してほしいから、と“左脳”で考えていました。でも自分がそういう立場になって、初めてそこに魂がこもったというか、本当にそういう人たちが活用しやすい環境をつくっていかなければいけないと思いました。

 「制度以外になにかできることはないだろうか」「どういった形で情報を発信していけばいいのだろうか」――そんなことを考えるようになりました。

 いろんな意味で、よかったと思いますね。現場を離れていた、私の2年間は。

つづく

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