出版社勤務後、世界のカルチャーから政治、エンタメまで幅広く取材、夕刊紙を中心に週刊誌「週刊現代」「週刊ポスト」「アサヒ芸能」などで活躍するライター。翻訳・編集にも携わる。世界を旅して現地人との親睦を深めた経験から、世界的なニュースで生の声を直接拾いながら読者に伝えることを信条としている。
世界最大の経済大国である米国の経済状況は、史上最悪規模の景気後退を脱して回復しつつあるが、それでもまだ不安定な感は否めない。しかも失業率が改善したと一喜一憂しながらも、オバマ政権は政治的なごたごたで政府の封鎖に追い込まれたり、債務上限の問題に足を引っ張られたりしている。
米国では2011年から、一部の富裕層が富を支配しているといういらだちが表面化し、ウォール街を占拠するデモが発生した。富裕層である国民の1%が、残りの99%の国民から怒りの矛先を向けられることになったのだ。
だがそれ以降も同国では格差が縮まるどころか広がっている。統計を見る限り、99%側の国民の所得は一向に増えていない。雇用は増えても、世帯年収は2009年の水準を下回り、賃金が上がらない状況も問題視されている。
そんな99%の状況を横目に、1%側の所得は順調に増え続けている。2012年の統計によれば、富裕層1%が米国における全所得の19%以上を占めている。これは過去最大の数字だ。
結局のところ、カネはカネのあるところに集まるのだ。それを如実に示す調査結果が最近発表された。
スイスの大手投資銀行UBSとシンガポールの調査会社が共同で行った「2013年億万長者動態調査」によれば、リーマンショック時から億万長者、いわゆる「1%」の数は増加し、彼らは当時よりも2倍も金持ちになっていることが分かった。
報告書にははっきりとこう書かれている。「経済回復の道は簡単ではないが、超富裕層の富は増え続けている」。ちなみに億万長者とは、資産が10億ドル(約1000億円)以上の富豪のことを指す。
この調査が興味深いのは、億万長者の「生態」をまとめていることだ。まず世界には現在、億万長者が2170人いる。そして彼らの資産を合わせると、何とその額は6兆5000億ドルを超える。2009年の億万長者合計資産が3兆1000億ドルだったことを考えると2倍に増えているのだ。しかも過去5年で、億万長者の数は60%増えているという。
地域別でみれば、億万長者の資産が最も増えたのは、急速に経済成長を成し遂げた中国を中心とするアジアだ。逆に、ギリシャやスペインなど経済的に苦境にあえいできた国を含む欧州は、世界で唯一、億万長者が減った地域だ。
では2170人の億万長者はどんな人たちなのか。彼らのうち6割は一代で富を築いた億万長者で、2割は遺産を受け継いだいわゆる「跡取り」だ。残りの2割はその両方だという。そして女性は13%で、億万長者のほとんどが男性だ。
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