数年で会社をやめる若手社員に共通していた「意識」とは?サカタカツミ「就活・転職のフシギ発見!」(2/3 ページ)

» 2013年11月25日 07時59分 公開
[サカタカツミ,Business Media 誠]

就活生の配属希望がスルーされてしまう背景

 ここまで読んだ皆さんの中から「ではどうしたいのだ、この採用担当部長は」とお叱りの声が飛んできそうですが、こういう悩みは採用の現場では尽きないようです。先に「そういう気遣いをしている時点でなかなか誠実」と私は書きましたが、多くの場合は、このケースのように悩んだりはしません。

 とりあえず、内定を出して入社させる。そして配属面談でも希望を聞く。実際に配属されたときには、就活生改め新入社員の思いは届かず、まったく希望していない仕事が用意されていた、という方が“一般的”なのです。

 ただ、企業の立場になって見れば“適材適所”を考えた配属をしただけ、ということになってしまいます。事実、希望していた仕事とは違う仕事を任せられたけれども、やってみると「これが自分の天職だったかもしれない」と今は満足している、というケースはたくさんあります。ただ、世の中そういう良い例ばかりではありません。

 思っていたのとは違う仕事を与えられ、違う、自分がやりたい仕事はこれではないと日々考え、一生懸命取り組むけれどもうまくいかない、やっぱり自分がしたい仕事はこれではない、我慢できない。と、負のスパイラルにはまってしまう若手社会人も多くいます。冒頭の採用担当部長は、そうなってしまっては自分の会社も不幸だし、その就活生も不幸になることが分かっている。けれども惜しい、採りたい……そんなジレンマを抱えているというわけです。そこで私は、別の企業で耳にした事例の話を少ししました。

早期離職してしまう若手に共通していた、ある「意識」とは

 サンプルとしてはとても小さい話なので、ちゃんとした調査ではなく、あくまでこんな事例があった、という程度の話です。ある企業で早期離職の理由について、簡単に調べた結果、一定の傾向が見つかりました。社員の「入社経緯」に注目して整理してみると、早期離職した従業員の多くは“翻意させた就活生”だったというのです。より正しくは「他のことがやりたいという気持ちが強く残っていた就活生」と言えるかもしれません。

 簡易調査をした企業の採用担当者は「もっと他のことがしたかった、もっと別の仕事に就きたかった、という思いが残っていた若手は『今の企業で働いている自分は本当の自分ではない』と考えて、どうしても我慢できなくなってしまう。だから早期離職してしまうのかもしれません」と話してくれました。同時に、その早期離職した人たちは、やりたいことに向かってキチンと努力して、一生懸命打ち込んできたからこそ、私たちも魅力的に感じ「ぜひともウチで一緒に働きましょうよ」と熱心に口説いてしまった、とも教えてくれました。

 魅力的な人材だからこそ、翻意させてまで入社させた。新卒採用の現場において、これは別に珍しい話ではありません。やりたいことが固まってしまっている就活生を「いや、君の本当にやりたいことは、こういうことでもあるよね」と、自社の事業が君のやりたかったことであると、再整理してしまうことで納得させる方法論は、現場ではよく使われています。

 世の中の役に立ちたいとか、人の生活を豊かにしたい、自分の身近な人に幸せを感じてほしい、という類いの話を、自分のやりたいことだと設定している就活生に対して「わたしの会社の事業は、文字通り、世の中の多くの人に役立つはず。わたしの会社の製品は、その信念だけで作られている」と繰り返し説明することで「なるほど、こういうやり方でも、私が世の中を変えられるかもしれない」と、就活生は考えてしまうこともあるのです。

 ただ、そうやって翻意させた若手社会人を結局は早期に手放してしまう結果に、その企業の採用担当者は「今年からは、翻意させない採用をしたいと思っています。いや、違いますね。正しくいうと、心残りのある就活生には内定を出さない。良い人材だと思ってもあきらめるというスタンスを徹底したいと思います」と話してくれました。結果的に、採用コストも教育コストも浪費してしまうし、その就活生の貴重な時間も無駄にしてしまう。それなら、別の「長く働いてくれる人」を採用したい、と。

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