プロスポーツ選手の活躍を陰で支える通訳という存在臼北信行のスポーツ裏ネタ通信(2/4 ページ)

» 2014年01月09日 08時00分 公開
[臼北信行Business Media 誠]

通訳に頼り切ってしまってはダメ、話すときは自分の言葉で

 さて、前出の中田氏が「その道のプロ」と口にしていた通訳という仕事は、スポーツ界においてもとても難しくデリケートな役回りである。サッカー界だけではなく、それは野球の世界でも一緒だ。

 かつてメジャーリーグのニューヨークヤンキースなどで活躍した松井秀喜氏の専属通訳を務めたロヘリオ・カーロン氏から「単に選手のコメントを訳すだけではなく、周りの空気も読めなければいけない」という専属通訳の鉄則を聞いたことがある。四六時中、聞く側に立って常に配慮する姿勢も忘れないようにと心がけながら気を配っていたという。

 カーロン氏は現役時代の松井氏にプライベートで英語も教えていた。「すべて通訳に頼り切る雰囲気を作り出してしまうのもダメ」という持論があったからだ。2003年のメジャー移籍当初は中学生程度の簡単な単語しか話せなかった松井氏が、カーロン氏の熱心な指導によって数年後には通訳なしでもチームメートと野球の技術論を交わせるレベルにまで急成長。

 松井氏も「ロヘ(カーロン氏の愛称)のおかげで自分は本当に助かりましたよね。『難しいことはともかく、基本的にはなるべく自分で話したほうがいい』というのが、彼の考えでしたから。たくさんの選手と直接会話できるようになったことで、チームメートにボクの本音が伝わるようになった」と語っている。

 専属通訳のカーロン氏の尽力によって松井氏は語学力を大きく向上させ、他のチームメートたちとストレートな本音をぶつけ合えるようになり、信頼関係を深めるに至ったのだ。これがゴジラのサクセスストーリーの一端を担ったのは言うまでもない。

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