そこで、PC事業の収益性をもう少し深堀りするために、売上高を「数量」と「単価」に分解してみましょう。小学校で習った割り算のような分析手法ですが、そこから見えてくるものは意外と大きいのです。
ソニーの決算プレゼンテーション資料を見ると(参照リンク)、PCの生産台数が四半期ごとに報告されています。さらに、先ほど紹介したパーソナル・モバイルプロダクツの売上高を、こちらの生産台数で割り算すると、1台当たりの売上高の推移が分かります。エントリーモデルからハイエンド商品までいろいろなラインアップがあるなかで、ざっくり平均をとったらこれくらいの値段……というイメージです。
生産量が低下している半面、単価は横ばいに近い動きをしていることが分かります。中国や台湾などのメーカー(Lenovo、ASUSTeK Computer、Acerなど)が低価格でノートPCを販売するようになり、価格競争がし烈になっているPC業界ではありますが、VAIOは高品質でデザイン性の高い製品を生産することで、付加価値を追求しながら戦っているブランドであることがうかがえました。
ただ、ここでもう1つ考えなければいけないのが「コスト」。付加価値を追求すれば、どうしても開発費や材料費がかさみます。旧型機と比べて性能が高くなっても、それを価格に転嫁するのが非常に難しいのがPCという製品です。かといって、同型の製品は3カ月から半年であっという間に値崩れする。“走り続けなければ負け”という非常に過酷な戦いが起こっている場でもあります。
また、PCのような反復生産品は、生産量が増えるほど1台当たりのコストを押し下げることができる……つまり「規模の経済」と呼ばれるものが働く製品です。ところが、ソニーの場合はその逆の現象が生じているわけですから、1台当たりのコストは、全盛期に比べるとかなり高まっていることでしょう。
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