ソニーから学ぶ 事業撤退の「引き際」数字のオモテとウラを学ぶコラム(1/4 ページ)

» 2014年02月10日 08時20分 公開
[眞山徳人,Business Media 誠]

数字のオモテとウラを学ぶコラム:

 企業のWebサイトを見てみると、プレスリリースのほかにも、決算情報や月ごとの業績資料など、参考になる情報がたくさん眠っています。主にマスコミや専門家向けに公開されているものですが、実はビジネスパーソンにとってもためになる資料なのです。「企業→マスコミ→自分」という情報の流れのほかに、「企業→自分」という情報の流れを持つことは、スピード感が求められる今のビジネス社会では、大きな“武器”になるでしょう。

 この連載では、企業が発表するプレスリリースや決算短信などを題材に「なぜこのような発表が行われるのか?」「この発表の舞台裏では何が起こっているのか?」「今後、この企業はどうなるのか?」という疑問に対して、著者がときに答え、ときに推測します。


著者プロフィール・眞山徳人:

 公認会計士。大手監査法人にて、監査業務のほか、管理会計の導入から経営ビジョンの策定にいたるまで、さまざまな種類のコンサルティング業務に従事。また、大学や大学院でのインターンシップ研修の運営や各種企業研修での講師も担当。

 難しい会計やビジネスの世界を分かりやすくひも解き、「中学生でも分かるように」説明することを信条としており、書籍や雑誌でも物語や漫画などの形式で会計の仕組みを解説している。座右の銘は「できるときに、できることを、できるだけ」。誠ブログ「公認会計士まーやんの『ロジカるつぼ』」を連載中。


 ソニーが2月6日、大きな発表をしました。それは「PC事業からの撤退」。少し長くなりますが、以下はプレスリリースの引用です。

 本日、日本産業パートナーズ株式会社(JIP)との間で、ソニーがVAIOブランドを付して運営しているPC事業を、同社に譲渡することに関する意向確認書を締結しました。

 グローバルなPC業界全体の大幅な構造の変化、ソニー全体の事業ポートフォリオ戦略、「VAIO」をご愛顧頂いているお客さまへの継続的なサポートの必要性、社員の雇用機会などを総合的に検討した結果、ソニーとしては、モバイル領域ではスマートフォン及びタブレットに集中し、PC事業をJIPが設立する新会社へ事業譲渡することが最適であるとの判断に到りました。今後、ソニーとJIPは、デューデリジェンス(当該PC事業の精査)及び更なる協議を経て、2014年3月末までに事業譲渡に関する正式契約を締結することを目指します。なお、当該新会社は、設立当初は、商品構成を見直した上で日本を中心にコンスーマー及び法人向けPCを適切な販路を通じて販売することに注力し、適切な事業規模による運営を行う予定です。

 新会社への事業譲渡にともない、ソニーでは、PC製品の企画、設計、開発を終了し、製造、販売についても各国で発売する2014年春モデルを最後として事業を収束する予定です。ソニーの事業収束後も販売済み商品のお客さまへのアフターサービスは継続します。ソニー株式会社及びソニーイーエムシーエス株式会社などでPCの企画、設計、開発、製造、販売などの業務に携わってきた社員のうち約250〜300名は、JIPが設立する新会社で雇用される予定です。加えて、ソニーグループ内の他の事業部門への配置転換などを検討します。また、新会社での雇用やグループ内への異動が困難な人員を対象として社外への転進を支援するための早期退職支援プログラムを実施する予定です。

 簡単にポイントをまとめると、(1)PC事業からは事実上撤退する(2)今後はスマートフォン、タブレットに集中(3)撤退に伴い、いわゆるリストラも敢行する――ということになります。

 ソニーのPCといえばVAIOというブランドで有名ですが、10年前、IBMのThinkPadがレノボのブランドとして再出発をしたように、VAIOもまた別の会社のブランドとして船出をするのかもしれません。

 さて、今回ソニーの経営陣はリストラを含む苦汁の決断をしたわけですが、このような事業の「引き際」というのは判断がとても難しい。前回の記事ではセブン&アイホールディングスを題材に、新商品の投入がコンビニの収益性を左右すると書きましたが(関連記事)、今回はある意味で真逆の視点。「事業から撤退すべき時期」をどう見極めるのか、という点にスポットライトを当てて分析します。

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