新幹線清掃を7分間で終わらせる“おもてなし”集団働くこと、生きること(前編)(1/3 ページ)

» 2014年02月21日 08時48分 公開
[印南敦史,Business Media 誠]

働くこと、生きること:

 終身雇用が崩壊し、安定した生活を求め公務員、専業主婦を目指す人が一定数いる一方、東日本大震災などを経て、働き方や仕事に対する考えを大きく変えた人は多く、実際に働き方を変えた人も増えている。仕事一辺倒から、家族とのかかわり方を見直す人も多くなっている。

 さまざまな職場環境に生きる人々を、多数のインタビュー経験を持つ印南敦史が独自の視点からインタビュー。仕事と家族を中心としたそれぞれの言葉のなかから、働くとは、生きるとは何かを、働くことの価値、そして生きる意味を見出す。

 この連載『働くこと、生きること』は、2014年にあさ出版より書籍化を予定しています。


印南敦史(いんなみ・あつし)

 1962年東京生まれ。ライター、編集者、コピーライター。人間性を引き出すことに主眼を置いたインタビューを得意分野とし、週刊文春、日刊現代、STORYなどさまざまな媒体において、これまでに500件におよぶインタビュー実積を持つ。また書評家でもあり、「ライフハッカー」への寄稿は高い評価を得ている。


 矢部輝夫さんは、現在ベストセラーになっている『奇跡の職場 新幹線清掃チームの“働く誇り”』(あさ出版)の著者。東北および上越新幹線の車内清掃を担当する株式会社JR東日本テクノハートTESSEI(以下テッセイ)の社員であり、名刺の肩書きは「おもてなし創造部長」となっている。

 「新幹線清掃を7分間で終わらせる技術を持ったテッセイは、その取り組みが世界的にも評価されているお掃除の会社です。ただし、役割はお掃除だけに限定されてはいません。お掃除を中心としながらも、そこにまつわるすべての仕事を『おもてなし』と位置付けている。つまり私の肩書きには、そんな意味が込められているのです。東京オリンピックのプレゼンテーション以来、『おもてなし』は流行語になりましたが、私たちは数年前からずっと『おもてなし』の重要性を訴えています」

 仕事の内容は、駅のホームで迷っている人の誘導、乗車位置のご案内なと多岐にわたっている。それらは明らかに、「お掃除の会社」の役割を越えたものだ。

 「確かにそうなんですが、それはあくまで“こちら側”に立った考え方でしかない。しかし新幹線に乗るお客さまにとっては、駅に着いてから乗車し、目的地で降りるまでのすべてのプロセスが『思い出』と直結している。だとしたら、できる限りいい思い出をつくっていただきたいじゃないですか。そう考えれば、『自分たちの掃除は掃除だから』とそれ以外のことに目を向けない姿勢は間違っているということが分かる。だからテッセイでは、おもてなしにこだわるわけです」

新幹線の清掃を担当するJR東日本テクノハートTESSEIのスタッフは、車内の清掃をわずか7分間で終わらせる(撮影:織田桂子)
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