核保安サミットでオランダのハーグに集まったG7各国は首脳会議を開いて、ロシアに対する制裁を話し合った。そこでは今年ソチで開かれる予定だったG8(G7+ロシア)に参加しないこと、今後の会議へのロシアの参加を停止することなどを決めた。予想された内容ではあるが、1つ気になることがある。
日本も含めて欧米が最も懸念しているのは、エルエリアン氏と同様、東ウクライナにロシアが手を伸ばすことだろう。ロシア系住民とウクライナ系住民の間で暴動でも発生し、死者が出たりすれば「ロシア系住民の保護」を名目にロシア軍が出動する(クリミアのときのように国籍を明らかにしない形で「民兵」を装うこともありうる)だろう。そうなれば、一気にロシア対ウクライナという軍事衝突の危険が高まる。
プーチン大統領に、東ウクライナへの「進出」とクリミア併合の両方を諦めさせるのは至難の業だ。そんなことをすれば、プーチンの支持率は急落して、それこそ旧ソ連諸国へのにらみが効かなくなる。ベラルーシやグルジア、それにチェチェン問題も再発しかねない。
プーチン体制が弱体化することは欧米諸国にとって利益ではない。もちろん日本にとっても利益にならない。北方4島問題や平和条約、そしてエネルギー開発を推進するためには、今のところプーチン大統領が最も交渉しやすい相手であるからだ。それに日本にとって、ロシアと中国があまり接近するのは好ましくない。
そうなるとクリミア併合については、ウクライナに返すべきだと主張しながらも、事実上は黙認し、ウクライナ東部へのロシアの進出は何とか抑えるということしかできないだろう。その意味では、クリミアは仕方がないというサインがどこかで出るのだろうか。
その時に日本は何と言うか。日本は尖閣という問題を抱えている以上「力を背景にした現状変更は認められない」という「正論」を主張するしかない。クリミアについてロシアへの併合を国際社会が認めてしまえば、もし尖閣を中国が占領しても、抗議はしても誰も実力を行使しないということになりかねない。日本にとっては、クリミア問題はまさに尖閣問題へと姿を変えるのである。
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