就活・転職のフシギがきっと永遠になくならない、いくつかの理由サカタカツミ「就活・転職のフシギ発見!」・最終回(2/4 ページ)

» 2014年03月31日 08時30分 公開
[サカタカツミ,Business Media 誠]

未知なる状態で確実な成功を収めたい心理が、「就活のフシギ」を作る

 似たような話は他にもいくらでもあります。例えば、面接のとき、入室する際にするノックの数を間違えると落ちてしまうとか、手の位置や持ってきたカバンの置き場所によっても合否が決まるとか、会社に入る前にコートをキチンと脱いだかどうかまで企業はチェックしているとか……もうめちゃくちゃです。

 ビジネスパーソンの常識から考えれば「そんなことで合否を決めることに合理性はない」とすぐ気がつくでしょう。しかし、当然の話ですが、学生にはビジネスパーソンの常識などありません。就活とは、一方の当事者である学生が、多くの必要な知識を持たない未知の状態(要は、情報の非対称性の問題です)で、それでも失敗してはならない、確実な成功を収めなければならない、という心理状況になっているのです。

 ネット社会が発達し、ブログや各種Webサイト、それこそこの連載などさまざまなところで「そういうことはない」「根拠のない話だ」と、いろんな人がどれだけ言葉を尽くして説明しても、この手の都市伝説はなくなりません。失敗したくない、少しでも安全な行動をとりたい学生たちにとっては、たとえ出所があいまいで、不確かな情報であったとしても「○○をやってはいけない」という情報は貴重であり、自分たちの行動指針にもなるからです。

 自分がなぜ採用されないのかが分からない、企業が人を採用する基準が明快に指し示されていない、何をすれば内定が取れるのか分かりにくい、といった状況が今よりも大幅に改善されないかぎり、この類いの都市伝説は健在であり続けるはずです。同時に“就活のフシギ”も生み出され続けることでしょう。

転職のフシギは、都市伝説ではなく、企業の組織の歪みから産まれる

 それでは、“転職のフシギ”はどうでしょうか? 就活とは違って、情報の非対称性は小さいるはずです。転職するからといって、仮に転職スーツなるものが売り出されたとしても、多くのビジネスパーソンはそれに見向きもしないでしょう。当然、そんなことに意味がないことを知っているからです。

 しかし、転職にもやはり多くのフシギが存在します。その多くは、企業の組織構造や運営の歪みから産まれてくるものです。例えば、企業の中途採用が上手くいかない理由の一つに、「採用担当者が現場の仕事を理解していない」というケースがあります。

 実際にどんな業務をしているのかが分からない人が、求人広告を作成し、人を集め、スクリーニングするわけですから、当然、現場にフィットしないという事態が起きることは、容易に想像できます。

 だからといって、現場に採用を任せるかというと、決してそういうことはしない。ある部分は現場の意見を取り入れるけれども、最終的にはいままでと同じやり方で、という企業が多いのが現実です。使えない従業員を採り続け、それを問題視することと、今までのやり方を変えるということを天秤(てんびん)にかけたときに「変えない」という選択肢を取ってしまう企業もあるのです。

 さらに、一定のキャリアを積んでいなければならない年齢にもかかわらず、経験にふさわしい能力が身に付いていなくて、企業から放り出されてしまった人の存在も、“転職のフシギ”のひとつといえるでしょう。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.