「天皇陛下がご出席になる園遊会にふさわしい松の木がほしい」「タイの王族に献上する珍しい直物を1カ月後までにそろえといて」――。
そんな内容の電話が、ある男のもとにかかってくる。職業「プラントハンター」――名前は、西畠清順(にしはた・せいじゅん)。彼は日本だけではなく、世界各地のあらゆるところを駆けずり回り、依頼のあった植物を見つけ出し、それを必ず届けるのだ。
ん? プラントハンターってナニ? と思われる人も多いかもしれない。プラントハンターとは、17世紀から20世紀初頭にかけて、欧州で活躍してきた人たちのこと。王族や貴族のために、世界中の珍しい花を求めて冒険し、現地でしか採れない花の苗や種を持ち帰っていたのだ。ちなみに、ペリーが黒船で来日したときにも2人のプラントハンターが同船して、日本で植物を採取したとも言われている。
落ちたら命はない。地元の人も絶対に近づかない断崖絶壁であっても、そこにしかない花があれば必ず手にする。ジャングルの中で無数の蚊に襲われようとも、ヒルに大量の血を吸われようとも、依頼のあった花は必ず持ち帰る。
危険と隣り合わせな仕事だが、彼はなぜ花を採り続けるのか。あまり知られていないプラントハンターの世界を前後編で紹介する。聞き手は、Business Media 誠編集部の土肥義則。
1980年生まれ。明治元年より150年続く、花と植木の卸問屋「株式会社 花宇」の5代目。
日本全国・世界数十カ国を旅し、収集・生産している植物は数千種類。日々集める植物素材で、ラ ンドスケープ・室内緑化・フラワーデザイン・いけばななど国内はもとより海外からのプロジェクトも含め年間2000件 を超える案件に応えている。
2012年1月 ひとの心に植物を植える活動である、“そら植物園”をスタート。さまざまな企業・団体・個人と植物を使ったプロジェクトを多数進行中。
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