経営コンサルティングのISラボ代表。日本ユニバック(現日本ユニシス)、日本アイ・ビー・エムなどを経て2012年5月、ISラボ設立。経営戦略、経営企画およびCRM領域にてコンサルティング活動中。ワクコンサルティングのパートナーコンサルタントとしても活動する。
「アンゾフの成長マトリックス」という言葉を知っていますか? これは経営戦略における意志決定のフレームワークです。事業をどのように拡大させるか、また成長の方向性を意識した施策を立案するために使います。
事業拡大の戦略を「製品戦略」と「市場戦略」の2軸に分けると、それぞれ既存の製品や顧客を狙うか、新しい製品や顧客を狙うかという2×2=4パターンの戦略が出てきます。それぞれの戦略は、以下の表の通りです。これをファストフード店の戦略に当てはめてみましょう。
既存製品 | 新製品 | |
---|---|---|
既存顧客 | 市場浸透戦略 | 新製品開発戦略 |
新規顧客 | 新市場開拓戦略 | 多角化戦略 |
最近、ファストフード企業がアルコール類の取り扱いに力を入れています。まずはケンタッキー・フライドチキン。2012年4月にビールやハイボールなどのアルコール類を販売する新型店「ROUTE25」を展開しましたが、これを今後3年で10店にするとしています。
ハンバーガーチェーンのバーガーキングは現在、全81店舗でビールなどのアルコール類を販売していますが、2013年の夏に女性に人気のある「モヒート」などのカクテル6種類を試験的に販売しました。フレッシュネスバーガーも東京都内の7店舗で、世界の瓶ビール7種類とモヒートを提供するなど、アルコールメニューの品ぞろえを増やしています。
こうした取り組みは、夜間の集客力を高めて客単価を引き上げる狙いで、仕事帰りの会社員といった新しい需要を掘り起こします。アンゾフの成長マトリックスでいうと、これは新製品の提供になりますが、市場(顧客)はどちらをメインに狙っているのでしょうか?
これはおそらく、既存顧客(図のA)でしょう。しかしこの路線だと、アルコールの提供もしているカフェのPRONTO(プロント)など、同じような形態の競合が多く存在し、劇的な成長路線を描くことが困難なように思えます。
ここはひとつ、新規顧客(図のB)――特にオヤジ市場を狙ってはいかがでしょうか。昼のファストフードといえば立ち食いそば、夜はガード下の焼き鳥屋が行きつけで、ハンバーガーなんて、子供や若者のおやつだと思っているかもしれません。
例えば、バイイング・パワー(強力な購買力)を背景に、独自のタレを使ったケンタッキー焼き鳥メニューをホッピーとセットで格安で提供する、なんてどうでしょう? 話題性もあり、情報番組などに取り上げられるかもしれません。これくらいの差別化とリスクを負わないと、競争が激しいファストフード業界で、大きな成長を実現するのは厳しいでしょう。(渡部弘毅)
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